86 / 114

第86話

* 金曜日。約束の15時に間に合うように早めに会社を出た。 大手企業なので大体場所は分かるが、一応迷子にならないようにスマホの地図を頼りに着いた先は、たくさんビルが立ち並ぶ中、一段と目を引く高層ビルだった。 ……ここが蓮さんの会社……。 改めてすごい人なのだと実感した。 うちの会社と比べ物にならない。と言うか、うちみたいな無名の会社と比べるのは失礼だろう。 深呼吸して中に入ると、受け付けのお姉さんと目が合った。ニコッと微笑んで、感じのいい女性。 でも、どこかで見た事あるような……、無いような……。 打ち合わせに来たものだと伝えると、社長室に行くように言われ、エレベーターに乗り最上階にある社長室に向かった。 もう、うちの会社と何もかも違う。知っている人に会うのに、とても緊張している。 それはこの会社の外観、雰囲気のせいか。 それとも俺がヘタレなだけか。 「うわ……景色すご……」 エレベーターの中から外が見えた。高層ビルなだけあって、某タワーも見える。すごい。 最上階に着き、エレベーターの扉がゆっくりと開かれた。 それはもうホテルかと思うほど綺麗な造りになっていた。観葉植物なんて置いちゃって、天井には高そうな証明、壁には何かよく分からないが高そうな絵画が飾られている。 他の階がどうなっているのは分からないが、こんなオシャレな空間でいつも仕事している人が少し羨ましいと思った。

ともだちにシェアしよう!