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第87話

エレベーターを降りると、通路は右と左に別れている。 社長室は一体どっちなのか……。 取り敢えず、右だ! 「わっ!」 と思い歩くと、ちょうど通路の角で人にぶつかってしまった。 盛大に尻もちを付いて、蓮さんの会社の人にみっともない所を見られてしまった。 「わ、すいません。大丈夫ですか?」 「あ、いえ、大丈夫です!こちらこそすみません!」 俺に向かって手を差し出す男性は、とても美形だった。かっこいいと言うか、美しいと言うか。 色白で、爽やか系で……例えるなら、少女漫画に出てくる王子様みたいな。 あまりの綺麗さに口を開けて見蕩れていると、クスクスと笑われてしまった。 恥ずかしくて顔を赤くすると、ポンと頭に手を置かれて撫でられている。 ……誰かと間違えてる? 「……ふふ、まぁまぁ似てるんだな……」 「はい?」 「いや、何でもない」 美人な男性は何かボソリと呟いたが、声が小さくて聞き取れなかった。 たまにあるよな、独り言いう時。きっとこの人もそうなのだろう。 「あ、あの、社長室が何処にあるのかお尋ねしたいのですが……」 「社長室はこの通路を真っ直ぐ行って左だよ。 じゃあ、またね。遠野くん」 「は、はい!ありがとうございました!」 ニコッと綺麗な笑顔を浮かべて、エレベーターに乗って行った。俺は深々と頭を下げて、社長室に向かう。 そう言えばあの人、「またね」と言っていたけれど……。また会う日が来るのだろうか。 名前は確か……『秋山』さんだっけ。

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