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第88話
「本当に、広すぎて迷子になるかと思いました。社長室の場所も分かんないし」
あの人に言われた通り進んで、無事社長室に着くことが出来た。
会社の中が広すぎて本当に迷子になる。それこそ地図が欲しいくらいに。
「すまんな。アイツが来てなければ下まで迎えに行ったんだけど……」
「あ、あの美形の男性の方ですか? すっごいかっこいいですね!モデルさんみたい!」
「……俺より、アイツの方がいいか?」
俺が興奮気味に言うと、蓮さんは不機嫌そうな顔をしてそう言った。
別に蓮さんと比べてそう言ったのではなく、本当にモデルさんみたいで綺麗な人だったから、つい言ってしまっただけで。
それに、蓮さんもかっこいい。初め見た時は芸能人かと思ったぐらいだ。
二人ともかっこいいが、またタイプが違うと言うか。
蓮さんはかっこいい系、あの人は美人系かな。
俺は断然かっこいい系のが好きなんだけど。
「もちろん俺は蓮さんがいいです」
「本当か?」
「本当です」
この話をしていると、そういう雰囲気になりそうで、咄嗟に話を逸らした。
ずっと気になっていた事を聞いてみた。
「あの方、社員さんなんですか?」
「いや、あんな奴雇いたくないな。会社を破壊されそうだ」
「え、破壊!?そんな感じの方には見えなかったけど……」
蓮さんは顔を横に振って、バツの悪そうな顔をした。その表情を見るからに、たぶんある意味すごい人なのだと思った。
人は見かけによらないんだな……。
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