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第97話

* あれから病院へ行き、検査をしてもらったが大した怪我じゃなくて安心した。 頭を殴られた時のふらつきは脳震盪で、腹を蹴られたのも臓器に傷はついておらず、少し煮えて痛々しい青紫色になっているが、すぐに良くなるとのこと。 家に帰ると直ぐに蓮さんが頭を下げて謝った。 「遅れてすまなかった」 「……いいんです、だって最終的には助けに来てくれたし。蓮さんは俺を放っておく訳ないって分かってたから」 頭を上げさせて、俺は蓮さんに腕を絡ませて離れないようにする。 今隣に居る人が蓮さんで良かったと心の底から思う。蓮さんが助けてくれなかったら俺は…そう考えるとゾッとする。 「それで、アイツにどこを触られた?まさか最後までシてないだろうな?」 「してないですよ。俺、やっぱり蓮さんじゃないと嫌みたい。早川さんに触られた所が気持ち悪くて、嫌で仕方が無かった」 正直にそう言うと、蓮さんは「当たり前だろ!」と少し怒った口調で言った。 チュウ、と優しく口付けられ、服の中に蓮さんの手が入ってくる。 俺は必死に蓮さんの手を止めようと、上から手を握った。 「なんで止めるんだ」 「だ、ダメです……。俺汚いから……お風呂入ってから……」 不機嫌そうに顔を歪めていたが、理由を話すと納得してくれたようで抱き抱えてお風呂場まで連れていかれる。 自分で脱げると言ったのに、俺が脱がすと譲らないから蓮さんに服を脱がせてもらう。 先程、あまり綺麗ではない公衆トイレの床に座り込んでしまったからスーツのズボンが少し汚れてしまった。スーツなんて何着も買えるわけじゃないし、俺はこのスーツしか持ってないので、捨てる訳にもいかない。クリーニングに出さないといけないな……なんて思っていると、蓮さんは汚れたスーツを乱暴に床に投げ捨てた。 「ちょっ!それスーツ!」 「新しいの買ってやる。トイレの床に付いたスーツ、例えクリーニングしたとしても着たくないだろ」 「そ、そうですけど……!スーツなんて高いのに、蓮さんに買ってもらうなんて出来ないです!」 高いスーツを、例え恋人であっても買ってやるなんて言うだろうか? いや、言わないだろう。少なくとも一般人は。 そう言えばこの人、初めて会った時も俺のスーツを乱暴に床に投げ捨てて「今度買ってやる」なんて言っていたっけ。 幸い目立ったシワにはなっていなくて、少しアイロンをかけて普通に着れたんだ。

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