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第99話
「他には何かないのか?」
「他に……?えーと、じゃあ……一緒にお風呂入りたい」
「それだけでいいのか?」
その言葉の意味は、バカな俺でも理解できる。
こんな事、普段は絶対に言わないし恥ずかしい。だけど、自分の口から言わないと蓮さんは本当に何もしてこないと思う。
それは……やだな。
「……エッチなことも……したい……」
「エッチなことって?」
「~~っ!わかってる癖に!」
勇気を振り絞って出た言葉は、恥ずかしさで声がとても小さくなってしまった。
だけど蓮さんはその言葉を理解し、ニヤニヤと笑っていた。そのエッチを事細かに聞こうとして、ポカポカと蓮さんを叩いた。
むぅっと頬を膨らませてそっぽを向くと、膨らませているほっぺたをツンツンと指でつつかれた。
もう!と手を払い除けて、一人で風呂場に入った。
完全に遊ばれている。もう知らない、一人で入るもん。
「怒った?」
「怒った」
「どうしたら機嫌直る?」
「直らない」
本当はそこまで怒ってないけど、仕返しだ。
体を洗うスポンジにボディソープを付けると、後から入ってきた蓮さんにスポンジを奪われた。
俺が洗う、と言うので素直に任せる事にした。
ゴシゴシと優しく背中を滑るスポンジが気持ち良くて、眠くなってくる。
あんな事があってから、眠くなるだなんて自分でもお気楽だと思う。蓮さんの胸でたくさん泣いて、あやしてもらって、たくさん抱き締められたから、あの時の恐怖心も薄れてしまった。
案外俺って図太い精神なのかも。だけど暫くは誰にも会いたくないな。他人に会うのが少し怖い。
「寝てるのか?風呂で寝るなよ」
「寝てないし……ちょっとウトウトしてただけ……」
「寝ようとしてるじゃねーか」
ウトウトしてただけで、別に寝ようとしてないし。
瞼がくっつきそうだったけれど、なんとか耐えたからまだセーフなのではないか。
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