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第102話

夏樹の白い肌に優しく手を這わせ、痛々しい青紫色になっている痣に軽くキスを落とす。 全身にキスを落とし、胸の突起に触れると夏樹の体はピクンと反応した。 片方の乳首だけ赤く腫れているのは、あの早川とかいう男の仕業だろう。 痛々しい痣、傷を見るとフツフツと怒りが込み上げてくる。夏樹を傷付けた早川は一生許すつもりは無い。……もう生きているかも分からないが。全てを真太郎に任せたので、きっと彼の好きなようにされているのだろう。彼の前では法律など無に等しい。 夏樹が誘拐される前に駆け付けられればよかったのだが、それが出来なかった自分自身にも腹が立つ。あの時電話に出なければ……と思うが、あの時電話に出れたからこそ夏樹を助けられたのであって、蓮一人では到底無理だった。 「蓮さん……?悲しい顔してる」 「あ、あぁ……。すまん」 ピタリと愛撫を止め、あの時強く引っ張られ赤く晴れた乳首を見て顔を曇らせている蓮に気付き、夏樹はソッと蓮の頬を手で撫でた。 夏樹に怪我をさせた事を後悔している蓮は、自分が許せなかった。察した夏樹は起き上がり、ギュッと蓮を抱きしめる。 「俺、もう大丈夫だよ。……でも、もう離れないで。ずっと一緒にいて」 「……っ!あぁ……。もちろんだ」 ずっと欲しかったその言葉に蓮は涙を流し、きつく夏樹を抱きしめた。 「あ、蓮さん泣いてるの?泣き虫だなぁ」 「っ、バカか!俺も泣く時は泣くんだよ!あぁ、もう……本当に離してやらないからな!」 「うん。俺も、離すつもりないから」 ずび……、と蓮の胸に埋まっている夏樹から鼻を啜るような音がする。きっと夏樹も泣いているんだろうと背中を優しく撫でると、涙を流しながら……でも、とても綺麗な笑顔を浮かべて笑っていた。 まったく、泣き虫はどっちだよ。と軽くため息をついて、優しく口付けを交わした。

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