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第113話
「待って、一つだけ聞き忘れてたんだけど、春樹と秋山さんの関係って一体……」
ちゃんと聞いておかなけば!と思い帰ろうとする所を引き止めて聞いてみた。
すると夏樹以外の三人が一斉に振り向いた。
「「「え!?」」」
ビックリするタイミングが同じで、夏樹もビックリして「え?」と素っ頓狂な声を出した。
な、なんでみんなビックリしてるんだ……?俺、おかしな事言った?
「兄さんって本当に鈍感だね」
「それな」
「さすがに分かるだろ」
みな口を揃えて俺を攻撃してくる。
でもさっぱり分からないのが辛い。だって、夏樹の頭の中は、春樹とアンナがお付き合いしている事になっているのだから。
「兄さん、付き合ってるのこの人だよ?誰だと思ったの?」
「どーもー。春樹の彼ピでーす」
「え!?!?」
春樹がビシッと指を指したその先に居たのは、秋山だった。紹介された秋山はふざけた様子で手を振っている。
あの、サイコパスでヤバイ秋山さんと春樹がお付き合い!?嘘だろ!? 一気に心配になってきた!!! 別に男同士だから問題!と言い訳でなく、単に夏樹の秋山への印象があまり良くなかったからだ。
「え、本当に?マジで言ってるの?アンナちゃんじゃなくて?」
「マジだよ。アンナちゃんはお友達。好きなのは真太郎だよ」
真太郎こと、秋山さんの腕をぎゅっと抱き寄せる春樹と、その肩を抱いて綺麗に微笑む秋山。
先程までのおどけた雰囲気はなく、本当に春樹が愛おしいのだと、その優しい顔を見て思った。
この人、こんな優しい顔も出来るんだな。なんか不思議な感じだ。
「本気なんだね。分かった!俺も応援する!」
「兄さん……!」
「ありがとう、夏樹くん」
二人に頭を下げてお礼を言われた。なんだか、娘を嫁に出す父親の気分だった。寂しいけど、嬉しい。
夏樹のやり取りを優しく見守っていた蓮に寄り添うと、腰に手が回ってきた。
見上げると、優しく微笑んでいて「頑張ったな」と言ってくれた。
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