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初夜
(なんでこんな事に…)
ミツルは、半裸のまま呆然として見慣れない部屋を見回した。
純粋な好意から、ユタカの部屋に刺身を持っていき、最初の三十分ばかりはビールを飲みながら刺身をつつき、和やかな雰囲気だった。
ユタカの瞳が憑かれたような光を湛え始めたのは、一本目のビールが空になり、ミツルが軽い酔いを覚え始めた頃だった。
気がつくと、としか言いようがないのだが…ユタカにするりと距離を縮められ、腕の中にいた。
「ユタカさんっ…?酔ってますねー、今日はこの辺にしときましょうか」
冗談めかして腕を振りほどこうとしてもびくともしない。都会的で洗練されたユタカのどこにこんな力があったのか不思議なほどだ。
それに間近で見ると、まだ少年に近い自分の腕に比べて、ユタカのしっかりとした腕は頼もしく、ミツルは胸が波打つのを感じた。
それを振り払うようにもう一度ミツルは叫んだ。
「ユタカさん、とにかく俺、もう帰ります。やめて下さい」
それを聞くとユタカは、ミツルの柔らかな猫っ毛に顔を埋めた。
「だめだ…もうここまで来たなら貴方は私のものになる」
言いながらユタカは、まるでミツルの身体を知っているみたいに的確に首筋、耳、鎖骨の順で下へ下へと舌を滑らせていった。
「あぁっ…!んん…!」
ミツルは思わず身体をくねらせて、切ない喘ぎ声をあげる。愛撫から逃げようとするように身体を動かすので、そうはさせまいとユタカは押さえつけ、口と手でより一層の執拗な愛撫を繰り返す。
(もう一息だ…)
自らも快楽に身を委ねながらも、ユタカは意識の一点で冷静に事態を観察していた。
ミツルが陥落し、自分から跪いてユタカを欲しがる瞬間まで、ゆっくりと追い込むつもりだった。
ユタカは穏やかな性格だったが、セックスの時にはそうするものだと思っていたし、いつも相手が陥落するのが当然だった。だから、何時間も技の限りを尽くして責め立てても、悲鳴を上げながらも涙を零し、歯を食いしばってミツルが耐えている様子は新鮮だった。
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