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第1話

「花火大会の日くらい、僕の為に空けといてよね……」 淋しさから漏れた僕の言葉は、畳の上で横になる大地に届かない。 浅黒い肌、太い腕、逞しい背中。 肉体労働で疲れたのだろう。 夕食を食べた後直ぐに眠ってしまった。 ここ最近は、本業のカメラの仕事も舞い込み、大地に休日などはない。 働く大変さは、理解してるつもり…… けど、まだ高校生の僕は……多分解ってない。 だから、こんな台詞が簡単に口から飛び出してしまうんだろう…… 「……ゆ、浴衣、…着てあげる、から……」 手にしていた大地のスマホをテーブルに置き、逞しい背中に身を擦り寄せて耳元で囁く。 すると大地がもぞっと動き、僕の方へと身を返すと、瞳を閉じたまま僕の背中に腕を回す。 瞬間、大地の肌の熱が伝わり、汗臭さと共に煙草と大地自身の匂いに包まれる。 「……わかった、空けとく」 低くて甘い、大地の少し掠れた声──それが、僕の鼓膜を優しく擽った。 奥二重の大きな目、筋の通った形の良い鼻、少し厚めのセクシーな唇。 顎のラインがすっきりとした面長に、ベリーショートの黒髪。 その顔が間近にあり、不覚にもドクンッと胸が高鳴る。 ……あ、 僕の背中にあった大地の手が、僕の後頭部へと移る。 そして、少し襟足の長い僕の髪を指に絡ませ、愛しそうに梳く。 「……玲央」 僕の鼻先にかかる、大地の吐息。 期待に気持ちが昂ぶり、顔が熱くなっていく…… ……ん、 少し開かれた大地の唇が此方に迫り……柔く瞼を閉じる。 ……大地…… トクトクと心臓が速く打ち 指先が痺れる… 期待に胸を膨らませ、顎を少しだけ突き出す。 「………」 ……すー、すー、 静かに聞こえる寝息。 と同時に、僕に触れていた大地の手が外れる。 瞼を少しだけ持ち上げると、大地の意識はもう別世界へと旅立っていた。 「……っ!……大地のばかっ!!」 そう言い放ち、眉尻を吊り上げた僕は、さっと大地から身を離した。 ……もう、知らない。 大地の、バカ……

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