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Vermilion

 朱色の光が部屋を照らす中、そこにあるのは赤い液体が無残に広がっている机。そしてそれを行った手。  あいつはまた俺の理解を越えたことをしでかした。  ああ、しまった。すっかり緩みきってしまって油断していた。いつもであればそんなことはさせないようにしていた。  実行するのはあいつ。元の状態に戻すのは俺。  正直とても面倒だ。簡単にできることではない、手間でしかない行動だ。  そして当の本人は起きているのか。 「おい」  呼び掛けても反応がない。これはきちんと意識があるに違いない。  俺は大きな足音を立てながら、あいつの元に近付いていく。数歩動いたところで俺の行動を察知したのか、首を動かして俺の方を見る。 「んー、何ー?」 「何じゃねえ。面倒なことはするな。片付けるのは誰だと思ってるんだ」 「いやー、つい、ね」  俺はあからさまな溜め息をつく。それでも反省しないと知っている、分かっているつもりではある。それでも出てしまうものは出てしまう。  あいつはいつもの調子で笑いながら腕を伸ばして俺を引き寄せる。 「うわっ」 「ねえ、ご褒美にいっぱいいい子いい子してあげるから、それで勘弁して。ね?」  俺にあいつの温もりがいっぱい伝わってくる。目の前には輝く笑顔。  ここまで揃っているとこれはもう俺は駄目だ。 「……はぁ」

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