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向こうの世界

 久々に昔の夢を見た。あいつに出会う前のこと。  明日の景色も見えない、ただその日暮らしを繰り返す日々のこと。  霞んで光すら届いていたか分からない、生きるか死ぬかの世界。  記憶にあるのはそれだけだ。  思い出すつもりもないし、思い出したくもない。  空想の世界だったら憧れるやつもいるかもしれないが、ただ一言投げてやりたい。  ろくでもなかった、と。  この話はもうこれまでだ。俺は横たわっていたソファから起き上がった。 「おや、起きたんだね」 「おう」 「昼寝なんて珍しいね。……夢見が悪かったかな?」  あいつには俺のことが何でもお見通しだ。項垂れながら頷こうとしたら、身体にあいつの感触がした。 「俺がいるからね」 (この作品は第48回Twitter300字ssの企画に参加した作品です)

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