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出るもの出ないもの

「あはははははっ」  目の前にいるこの男は、勝手に買ってきたサングラスを俺に掛け、勝手に腹を抱えて笑っていた。随分と失礼なものだ。  だが、俺自身もサングラスは似合わないという自覚は大いにある。普段からシャツとズボンというラフな格好で、柄も悪くなる。嫌なものだ。  いい加減に室内で掛けているのも嫌になってようやく外すが、あいつは笑ったままだ。  怒りもどこかへ消え去り、溜め息すら出てくる。 「おい、そろそろいいだろ」 「ははっ……。いやー、似合わないって思ってたけど、本当に似合わないね」 「…………」  ここまで失礼な物言いは久々だ。  これ以上言葉が思い浮かばない俺は、いらなくなったものを買った当人の手に置く。 「あれ、もういいの?」 「似合わないもんしてたってしょうがないだろ。そもそもなんで買ったんだ」 「かっこよかったから?」 「使うのか?」 「出掛けないから使わないね」  どうしたらそんなことを堂々と宣言できるのか。  頭が痛くなってきたような気がした。額に手を当てながら、思わず溜め息を漏らしていた。 「まぁまぁ、そんな溜め息ついてたら幸せ逃げちゃうよ」 「じゃあ無駄に金が出ていくのをどうにかしてくれ」 「そうだねー……」  あいつは突然立ち上がり、俺の方へと近付いてくる。  目の前にあいつの顔が迫る。  次の瞬間、唇に柔らかい感触が現れ、優しい温もりが俺を包み込む。  しばらくするとスッと離れ、間近に息が掛かる。 「幸せが留まってくれたら、お金も留まってくれるかも」  痺れるような感覚が全身に響き渡る。  これはもう、俺がどうにかするしかないのだろう。 (Twitterの創作BLワンライ&ワンドロ!への参加作品です)

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