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濃厚渦巻く
またあいつの突然の料理のリクエスト。
今日は特に変わった様子はない、普通の状態。こんなときは何も言わずに出しているのだが、どうしたのだろうか。
しかも、かなりこってりとした料理。
きっと何か閃いたのだろう、と正当化させて俺は作っていく。
材料を揃えるのは少々面倒だったが、あいつが求めていたものは作れたと思う。
「おい」
「ん、もうごはんの時間?」
ソファで作業をしていたあいつがテーブルへと向かってきた。
テーブルに置かれた俺の作った料理を見て目を丸くする。
「どうした?」
「いや……本当に作ってくれるとは思ってなかった。一人だったときに毎日頼んでたのを思い出したから言っただけだったんだけど」
「は?」
「でも、とっても美味しそう」
子どものような笑顔を向け、手を合わせてから食べ始める。
俺は一瞬のうちに虜にされ、動くことができなかった。
「どうしたの?」
丸いものは八つに切り分けられ、あいつはそのうちの一つを食べようとしている。
俺は座りながらそっとその光景を眺める。
全体にまぶしたチーズは、齧ると糸のように伸びていく。それを落ちないように舌に乗せながら掬っていく。
「んー美味しい。さすが」
純粋に喜んでいるあいつの姿に、俺は嬉しい以外の感情が渦巻いていた。
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