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愛に照らされ

 雑多なこの場所にはまるで不釣り合いなほどの快晴。  普段は全て機械任せの洗濯も、たまには太陽の光に任せようかと考えた。  俺はまだ寝ているだろうあいつのところへと向かう。  閉じられたドアを開け、予想通りのその姿を目に入れる。 「おい」  もちろん返事はない。ここまではいつもと同じやり取りだ。  だが今日は、俺はあいつのところへとずかずかと近付いていき、容赦なく身体を揺する。 「洗濯するからとっとと起きろ」 「んー……まだ眠いんだけど……」 「とっとと顔を洗ってこい」  布団を捲り上げ、あいつを強引に覚醒させる。  枕に抱き着いたその姿を晒され、眠そうに目を擦り、ゆっくりと目を開けていく。 「なんで……洗濯で起こすの……?」 「天気がいいからついでに汚いシーツでも洗おうかと思ってな」 「んー……」  無理矢理起こされたのが不満なようで、暗めのトーンで話しながらのそのそとベッドから出ていった。  主のいなくなった場所から、シーツと枕カバーを外し、ついでに部屋のカーテンを開ける。  きらきらと輝く光がこの部屋にも入ってくる。あいつにはまるで似合わないな。  そんなことを思いながら洗濯機の元へと向かい、持っていたものを全てその中に放り込む。  ふと気付くと、あいつの姿が見当たらない。  果たして顔くらいは洗ったのか。  ただそのことだけを考えながら、洗濯が終わるまでの間に家中掃除機を掛ける。  天気もよい、部屋もきれい。清々しい気分だ。  洗い終わった合図が鳴り響く。洗濯機の横においてあるハンガーを取り、一つ一つ留めていく。  全てを終えたところで、濡れたそれらを持って屋上へと向かっていく。  階段だけで上っていくには少々辛いが、これも少しは運動になるだろうと考えると特に何も感じなくなる。  そうして屋上のドアを開ける。  家の中のどこよりも爽やかな陽の光に照らされ、心地よい風が肌を撫でるこの場所に、あいつは仕事道具を持ち出してここにいた。 「何をしてるんだ?」 「顔を洗ってから、ここで仕事してる。いい天気だねー」 「外に出るなんて珍しいこともあるもんだな」  久々に使う物干し竿にハンガーを下げ、俺はあいつに近付いていく。  手が簡単に届く距離まで来たところで、突然あいつの腕が伸びてきて俺を掴んだ。俺はあいつの横に寝転される。 「たまにはさ、ここでゆっくりするのもいいんじゃない。俺が、愛をひたすら綴ってあげるよ」 「別にそれはいい」  本当は嬉しいが、それは俺の心の中に秘めていることにした。  俺たちは二人でその場に横たわった。 (Twitterの創作BLワンライ&ワンドロ!への参加作品です。お題は「洗濯日和」です。)

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