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第5話
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2人が通う高校は男女共学の普通高校で、県内でも中の上くらいのレベルだ。
あらかじめ受け取っていた書類に記載された内容から、またも同じクラスになったと知った2人は、同じ中学という事からもわかる通り家もそれなりに近かった為、一緒に登校する事に決めていた。
この学校は、近辺の高校の中では唯一の学ラン・セーラー服の制服。
ファスナータイプの濃紺の制服は、理知的な容貌の古賀によく似合っている。
「はよー」
「おはよう渡来君」
玄関のドアを開けた先で、制服をキッチリと着こんだ古賀が立っている。相変わらずのふんわりとした微笑みに、朝から和やかな空気が漂う。
「こうやって改めて見ると、ホントに古賀って格好良いよな」
「え?…か…格好良い…って。でも、渡来君も、可愛い…よ」
そこで思いっきり古賀をド突いた吉埜だが、自分は絶対に悪くないと思う。
「格好良いって言え!なんで俺だけ可愛い扱いなんだよ」
「ご、ごめん」
顔を真っ赤にしている古賀は、慌てた様子で謝った。
それを見た吉埜は、こんな外見で中身も良くて…高校生活無事に送れんのかな…、と、今日から始まる新生活を目前にある種の不安をもった。
当初の想定以上のイケメンっぷりに、狼の群れに羊を放り込む気分が拭えない。
それでも、最初から初対面の人間に言い寄るような勇気ある輩はいなかったようで、入学式は何事もなく無事に終わった。
視線の集中度合いが凄かったとはいえ、直接的な何かがなければいいか。
そんな風に思っていた吉埜が考えの甘さを実感したのは、翌日の事。
今日も同じく一緒に登校した2人が教室に姿を現わした瞬間、一斉にざわめきが起こり、それに驚いている古賀を席に座らせると同時にクラス中の生徒に囲まれてしまった。
これにはさすがの吉埜も少し引いた。
「ねぇ!2人とも名前は?」
「昨日も一緒にいたよな?同じ中学かよ」
「2人とも彼女いるの?」
「絶対いるだろ」
………朝から凄いテンションだなオイ…。
吉埜が顔を引き攣らせるくらいだ、古賀に至ってはビックリして固まっている。
そんな中、明るく力強い声が2人を助けた。
「はいはーい!みんな落ち着いてー!いくら2人が素敵メンズだからって、いきなり襲っちゃダメだよー」
朗らかで楽しそうな声はとても魅力的で、それまで騒いでいたみんなが一斉にその声の主を振り返った。
そこにいたのは、大きな瞳をキラキラと輝かせた女の子。
女子にしては少しだけ高めの身長と小麦色に焼けた肌。髪の毛は茶色のショートボブ。
外見からして明るく、顔には満面の笑みが浮かんでいる。
「あらら。今度は私が大注目?梁川亜海 15歳!ヨロシク~!」
皆の視線をものともせずにビシッと敬礼した彼女は、目が合った吉埜に片目を瞑る天性の陽気さを見せ、その瞬間からクラスのムードメーカーとして確定した。
…まるで自分の女子バージョンを見てるみたいだな。
どことなく似た性質を感じ取った吉埜は、その時点で亜海に親近感を持った。
「ヨロシクな、姉御。俺は渡来吉埜。こっちは古賀静流。古賀は俺と違って優しい性格だから、あんまり苛めんなよ?」
「ちょっ!アネゴって私の事?!」
吉埜と亜海のやりとりに、全員が爆笑する。次々に「姉御!」と呼ばれはじめた亜海は、「いーやー!」と頭を抱えて唸りだした。
みんなが更に爆笑したのは言うまでもない。
どうやら、このクラスはノリの良い人間が集まったようだ。横で古賀も笑っているのを見て、吉埜は込み上げる嬉しさを一人こっそりと噛みしめた。
その後に姿を現わした担任の河野 は、初日からワイワイと盛り上がっている生徒達を見て呆気に取られたとか…。
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