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Ⅱ-10

 シャツを取り、着替える。ガウン姿の非日常な姿を捨てると、従者としての矜持をいくらか取り戻せた気がした。生きている心地がする。リュシアンは疲れた身体を寝台に横たえ、到底眠れそうもない夜に抗うように目を閉じた。  夜はますます深みを増していく。遠くで風の音がする。この道をテオドールたちは目的地まで無事に進むことが出来るのだろうか。  それにしても。 「ド・アルマン……?」  やはり、気にかかる。だが、今この場でリュシアンの疑問に対する答えは得られそうにない。  テオドールら4人がルネを連れて戻ったのは夜明け前のことだった。  ようやく部屋から出ることを許されたリュシアンが見たものは、兄の腕の中で安らかな寝息をたてるルネと、眼窩の落ちくぼんだ、憔悴しきった様子のユーグ、そして―― 「……ご無事でなによりです、旦那様」  戻ったきり一切視線を合わせようともせず、無言のままルネを寝室へ運ぶテオドールの姿である。

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