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第24話

Side AKITO 「響くん... ?」 目尻に涙を光らせながら『離れないで』と言った彼は、そのまま目を閉じた。 それもそうか、あの時間まで飲んで、それからもう2時間以上身体を繋げていたんだから。 ゆっくりと自身を抜き、ベタベタになった身体を綺麗にしたあと先にシャワーを浴びた。 そうすれば徐々に頭が冷静になり、やりすぎた、と後悔が襲う。 「嫌われた、よな... 」 一目見たときから気になっていた存在。 本人に自覚は無いようだったけど、モデルに居そうな可愛らしい顔に華奢な体系、周りに一線を引くくせにお酒にはとことん弱くて、一度その線の内側に入れば甘えてくる。 そんな響くんのことを考えることが多くなったあの日、俺はついに手を出した。 もちろん拒絶されると思っていたし、あれが最後だとも思っていた。 それなのに拒否するどころか受け入れられた、ということに俺の気持ちも昂った。 次に会えたら、次も会えたら... ... ... そう期待して何度もあのバーに通った。 けれど期待すればするほど会えることは無く、仕事が忙しくなり数ヵ月、やっと出会えた時には確実に何かあったと言わんばかりに酔っ払っていた。 「俺に言えないってことは... ... 恋人のこと、かなぁ... ... 」 思い当たる節はあった。 でもそれを言葉にしてくれなきゃ、弱った彼の支えにはなれない。 いや、今は支えだなんて、ただの綺麗事だ。 自分を意識してほしい、『何か』あったときに自分を思い出してほしい。 そんな自分勝手な下心で今日彼を抱いた。 流石にやりすぎだろう。 今日こそ、彼との最後になるかもしれない。 洗面所から出ると、布団に丸まって寝息を立てる可愛らしい姿が目に入る。  どうせ眠れてなかったのだろう。 それくらい分かるのに、何故頑なに話したがらないのか... 。 ベッド脇の小さなテーブルに置いたスマホを手にし、時間も確認せずに電話を掛ける。 きっと起きている、いや、起きるに決まっている相手。 数回コールしたあと、不機嫌そうな声が俺の名前を呼んだ。 「もしもし?... ... うん、そうだよ。やっぱり無理だ。まぁ、99%こうなると思ってたけど。」 俺の言葉を聞いて、ギャンギャン吠える犬のような声を聞き流す。 「まぁそういうこと。あとは頼んだよ。」 スマホの横に置いたタバコの箱に手を伸ばし、1本手に取り火を付ける。 ベッドで眠る彼に匂いが付かないよう、出来るだけ離れたところに煙を吐くと、部屋にほんのり匂いが広がった。 まだ電話口で何か言っている相手に適当な相槌を打ち、もういいだろう、と俺は言葉にし慣れた台詞を口に出す。 「はいはい。どうにかするから大丈夫。... じゃあね、愛してるよミキ」 返事を聞くことも無く通話を終わらせた俺は、その言葉が彼を悩ませ苦しませていることも、それを聞かれていたことも、何一つ気付かないまま煙を吐いていた。 Side AKITO END

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