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第41話
「全部、って約束したから隠さず話すね。」
そう前置きされてから暁斗さんの話は始まった。
今から5年前、俺がこの会社に入ってすぐに主任主催の歓迎会とやらが近くの居酒屋であって、まだ未成年だった俺に間違えて酒を飲ませてしまった、というちょっとした事件があった。
その時初めて飲んだ酒に俺はすぐ酔っぱらって、記憶が曖昧なんだけど、どうやらそこに暁斗さんも居たらしい。
「たまたまだったんだけどね?... 響くんの存在がドストライクで。つまり一目惚れしたんだ。」
暁斗さんが俺に?聞き返せばにっこり笑って頷く暁斗さん。
それから暁斗さんは出版社の中を転々と移動する中で、なんとともちゃんの上司として働いていた時期があったらしく、その時俺とダッチー、そしてともちゃんの3人で撮った写真を見てともちゃんに俺のことを色々と聞いたんだとか。
それからどうやってか主任にも俺のことを聞いたとかで、暁斗さんは俺の知らない間に俺のことを知っていって、数年が経ったあの結婚式の日、俺と再会したらしい。
「暁斗さんも結婚式に居たんですか?」
「うん。響くんの号泣スピーチも聞いたし、写真もあるよ?」
「... ... ... それは忘れて欲しいです... 」
「やだよ、可愛かったよ?ボロ泣きしててさ。二次会も三次会も一応居たんだけどね?話せたのはあのバーだった。」
だからあのバーで暁斗さんに会ったことは、偶然なんかじゃなかったんだ。
暁斗さんが俺を追って、出会うように仕向けたんだって。
「まぁ、まさか達郎が好きだった、なんてカミングアウトされるとは思わなかったんだけどね。それでも男を恋愛対象として見れるなら、俺にもチャンスがあるかなって。... だから達郎のことを忘れて、響くんの頭の中が俺でいっぱいになればいいって思ったんだ。」
あの行為の理由も、暁斗さんが優しかった理由も、俺を暁斗さんでいっぱいにするため。
忘れようと思った、あの時囁かれた言葉も暁斗さんの本心だったんだ。
「... それからズルいけど響くんの主任さんに職権濫用してもらって電話番号を聞いたんだ。」
「え... ?... ... ... っもしかして!」
「そう。何度掛けてごめんね。それだけ必死だったんだよ。」
電話番号、と言われて俺はやっと思い出した。
間違い電話だと思って無視し続けたあの番号、それは暁斗さんの名刺に書いてあった番号と同じだった。
つまりあの電話は暁斗さんからで、その電話に確かダッチーが出て... ... ...
「... あの、あれはダッチーが... 」
「ああ、やっぱり達郎か... 。でもあれを聞いて、俺は響くんに恋人が出来たんだって思ったんだ。」
「ち、違います!勝手に、本当に勝手にダッチーが!!」
「いいよ、響くんが俺を好きっていうのは分かったからさ?でもあの時は... 俺もショックでね。あの日響くんを抱いたのは他にも理由があったけど、ほとんどあの電話に出た奴への嫉妬だった。」
俺が『お仕置き』だと言われ、初めてエッチしたあの日。暁斗さんがそんなことを考えていただなんて考えもしなかった。
確かにあの日の暁斗さんはちょっと違っていたから、そう言われると納得できる。
「... ... それから響くんに会う資格なんて無いって思ってたんだけど、どうしても我慢できなくて。その時たまたまあの企画が上がって、響くんのいる会社だって分かって... 強引に担当変わってもらったんだよ。」
「... ... そんなに俺を... ?」
「引いた?... 大人げないよね。でもそれくらい本気で好きになってた。」
「... 全然引いてない、嬉しい... ... っ」
じんわりと広がる、暁斗さんの気持ち。
広がれば広がるほど嬉しくて、泣きたくなんかないのに涙が溢れて止まらない。
「... これは嬉し泣き?」
「っ、はい... っ」
「じゃあいっか、好きなだけ泣いて?」
「う~~~っ」
それはまるで答え合わせのような話だった。
まだミキさんのことが引っ掛かっているけれど、暁斗さんの気持ちと俺の思いが同じであったこと、それは変わらない。
嬉しくてこんなに涙が出ることなんてあるんだ。
溢れた涙は止まらなくて、オマケに鼻水も出てる。
それでも俺は暁斗さんに聞きたかった。
「暁斗さん... っ、俺、暁斗さんのこと、好きになってもいいですか... ?」
叶わないと諦めた恋。
異性に恋だなんて、それが実ることなんてあり得ないと決めつけていた。
でももし、もしも許してくれるなら、俺は他でもない貴方と恋がしたい。
「もちろん。ついでに俺に愛されてくれると嬉しいんだけど?」
そう言って微笑む、愛しい人。
俺はぐちゃぐちゃな顔で、今までで一番幸せな瞬間を噛み締めた。
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