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答え合わせのような話をした、夢のようなあの日からもう1ヶ月、季節は冬へと変わり、俺と暁斗さんの関係も変わった。 「じゃあ、終わったら連絡して?」 「ん、了解っ」 会社の側のコンビニの駐車場で、周りを見渡し人が居ないことを確認してからチュッとキスをして車を降りる。 以前よりブルーベリーの匂いが濃くなったその車は、もちろん俺の大好きな暁斗さんの車で、最近は仕事の後暁斗さんのマンションにお泊まりしてここに送ってもらう、ということが増えていた。 ーーーあの日、暁斗さんの服にべったり鼻水を付けるくらいに泣いた俺。 暁斗さんは笑いながら着替えて、俺にも暁斗さんの匂いのする服を渡してくれて、それから俺が眠るまであのベッドで話をした。 そのほとんどが暁斗さんの知ってる俺についてのことで、ますます暁斗さんのことを知らない自分が居ることに気付いた俺は、 『両思いだと分かったけれど、告白はちゃんと暁斗さんを知ってからもう一度したい。』 そう改めてお願いした。俺の我が儘を暁斗さんは受け入れてくれて、その時が来るのを楽しみにしてるよって言ってくれた。 だから今、俺たちの関係は恋人じゃなくてただの両思い。 形にこだわらなくても、俺は幸せだった。 プライベートでは敬語はやめて欲しい、そう言われてから徐々に敬語を辞めて、今はすっかり普段の俺の話し方になったし、暁斗さんもたまに電話中のような話し方をするようになった。 「おはようございまーす」 「おはよっ響くん!... 今日もラブラブ?」 「ちょ!千裕くん声大きい!」 会社に着くなりニヤニヤ顔の千裕くんに『ラブラブ』なんて言われてしまい、少しだけ顔が赤くなる。...暁斗さんと話をした翌日、出社するなり悪魔に喫煙所に連行されて、あれこれ事情聴取された俺は千裕くんにも一通り報告をしたんだ。 自分のことでいっぱいいっぱいだったけど、千裕くんも主任に片想いしている。 俺が主任とこうやって二人で抜け出すことを気にしていたら悪いと思ったからだ。  千裕くんと主任、二人が俺たちのことを知っている人となった。 ちなみに仕事も順調に進んでいる。 暁斗さんの仕事モードは中々の『鬼』で、期日までにやることをやっておかないと笑顔で怒られたし、それから俺は俄然やる気をだして、前よりかなり集中できるようになった。 打合せで暁斗さんに会えるのが楽しみっていうのもあるけど、やっぱりクリファンの世界は面白い。これを早く他の人にも知ってもらいたい。 その気持ちが強くて、予定よりも早くデザインは進んでいる。 プライベートと仕事、その二つを両立できている今が、人生で一番幸せだ。 ✳✳✳✳✳ 仕事が終わり暁斗さんに連絡をすれば、俺より先に上がっていた暁斗さんからコンビニにいる、と言われてダッシュで向かう。 そうすれば朝別れた場所と同じところに停まる愛しい人の車。 迷わず助手席の扉を開けて、俺は暁斗さんの横に座った。 「お疲れさま」 「ありがと!暁斗さんも、お疲れさまっ」 「そのままウチでいい?外でご飯食べる?」 「暁斗さんちがいい!」 「了解」 外食をする日もあれば暁斗さんの手料理を食べることもあって、俺はその手料理が大好きだった。 暁斗さんって、料理が上手い。 あるものだけで、アレンジした美味しい料理をパパッと作ってくれる。 忙しいのに... と言えば好きなことだから平気って笑ってくれて、俺はそれに甘えている。 洗い物は俺の仕事にして、暁斗さんはその横で食後の一服をするのがおうちご飯の日の流れだ。 暁斗さんの部屋には俺の物が増えている。 着替えに歯ブラシ、スマホの充電器... それを置いていったら?って言ってくれたのは暁斗さんで、『特別』なのかなって思うと胸がこそばゆくなる。 今日もいつもと同じように美味しい手料理を食べて、洗い物をする俺の横で嗅ぎ慣れたブルーベリーの匂いのするタバコを吸っている暁斗さん。 順番にお風呂に入って、髪を乾かしてもらって、ベッドに横になれば暁斗さんが抱き締めてくれて。 「おやすみ、響くん」 「おやすみなさい、暁斗さん」 チュ、と触れるだけのおやすみのキスをして眠りにつく。 幸せ。幸せなんだ。 幸せなんだけどーーーーーーー 暁斗さんと両思いになって1ヶ月、俺はある悩みを抱えていた。

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