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俺はシフト制、暁斗さんは基本は土日休みってことで休みが被ることはあまりない。 だから俺が休みの日は暁斗さんの仕事が終わるまで暇してるんだけど、今日はその暇な休みのお昼に、会社の近くのカフェで千裕くんと待ち合わせをしていた。 「おまたせっ!」 「全然。それよりごめんね、お昼休みに... 」 「大丈夫だよ、それより話って?」 貴重なお昼休みに申し訳ない、と千裕くん用に買っておいたサンドイッチと、好きだと聞いていたチョコレートシェイクの乗ったトレイを渡す。 本当はこんな場所で昼間から話すようなことじゃないって分かってるけど、そう前置きをして、なるべく小さな声でチョコレートシェイクを飲む千裕くんに悩みを話した。 「千裕くんは... その、主任と何回くらいするの... ?」 「え?」 「週にでも月にでもいいんだけど... 」 「す、するって、もしかして... ?」 「うん、エッチの回数... ... ... 」 そう、俺の悩みとは『エッチのこと』だった。 シェイクを吐きそうになった千裕くんには大変申し訳ないと思ってる。 だけどどうしても、どうしても気になったんだ。 「えっと... ... それが響くんの悩みなんだよね?」 「うん。本当にごめん... 」 「いいよぉ、ならちゃんと答えるけど... うーん... ... 5回くらいかな?」 「月に?」 「ううん、週に。」 ぶはっ!と今度は俺がお決まりのコーヒーミルクを吐きそうになる。 ちょっと待て、週5!?それってほぼしてるってことだよな!? 質問したのは自分なのに、恥ずかしくなってしまう。 「響くんは?何回くらいなの?」 「... ... ... それが... ... その... ... 」 「もしかして毎日とか?ひゃ~、そりゃ身体持たないよね!」 「違う違う!その逆で... ... あれから何も無くて... 。」 「... ... え?何も無くてって... ?」 「だからー... その、キスだけっていうか... 」 「うそ!?!?!?!?」 店内に響き渡る千裕くんの声。 そりゃそうなるよな... 。俺だって驚いてるんだから。 俺の悩みはエッチの回数。というより、暁斗さんが嫉妬したと言っていた初めてのエッチからもう数ヵ月、両思いになってからは1ヶ月だけど、その間何もしない暁斗さんのことが気になっていた。 「抜き合いは?それくらいはしないの?」 「... しない」 「... ... マジか、そりゃ大事件だ。」 「はぁぁ... やっぱり俺、下手くそだったのかなぁ... 」 暁斗さんと両思いになって、『食べちゃいたい』とか言われていた俺はそれなりに覚悟をしてお泊まりをしていた。 だけどいつだって、おやすみのキスで終わってしまう。 エッチがしたい、っていうよりも、初めてエッチしたときに俺が下手くそでもうやりたくないと暁斗さんが思ってるんじゃないかって、それが心配だった。 かといって自分から誘えるほどの勇気も自信もない。 まだ『両思い』なだけで、形にこだわっていないとは言っても、やっぱり男だ。欲は溜まる一方で、限界もある。 今の俺は『欲求不満』であることに間違いなかった。 「うーん... ... それは難しい問題だよね... 」 「... 千裕くんはそれだけしてたら一人ですることもないよね?」 「え!?あ、うん... 」 「俺あんまりすることなかったから恥ずかしいし... なんか、変になりそう。」 「ちょっとちょっと!その辺に色気出さないでよ!?あ、アイツから聞いてもらうとかは?仲良いし!」 「アイツって主任?... それ言ったら俺が欲求不満ってバレるし。嫌だよー... 」 「じゃあ響くんがなんとなーく誘ってみるとか!」 「なんとなーくって?」 「例えば... ... ... ... 」 ごにょごにょと小さな声で話す俺たちは、きっと周りから見たら変な人だ。 でもそれだけ俺は必死だった。 暁斗さんが俺に興味がないのか、下手くそだったからエッチしたくないのか。 それともそうじゃないのか... お昼休みが終わるギリギリまで千裕くんを付き合わせ、俺はなんとなく誘う方法を伝授してもらった。

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