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(よし、やってみよう... ... ... !) 千裕くんと別れてから数時間、そろそろ暁斗さんの仕事が終わる時間だ。 俺が休みの日は暁斗さんのマンションで待つことになっていて、実は合鍵も持っていたりする。 いつもはラフな部屋着でソファーに座り、図々しくもテレビを見てるけど、今日の俺は違う。 カフェからの帰りに服屋に寄って、新しい服を買ってそれを着た。 俺らしくない、首元がガッツリ開いているニット。サイズは千裕くんオススメのワンサイズ大きめだ。 着なれない服はスースーするし、サイズが大きいせいでダボダボしていてなんだか落ち着かない。 それでも、少しでも暁斗さんがその気になってくれたら... そんな下心に溢れた俺は玄関で暁斗さんの帰りを今か今かと待っていた。 コツコツと足音が聞こえ、鍵を差す音が聞こえると同時に俺はドアノブを持って先に扉を開く。 「お、おかえりなさい... っ!」 ドキドキして噛みそうになる一言。 暁斗さんは驚いた顔をしてから、すぐに笑顔になって 「ただいま、響くん」 そう言って俺の頬にキスをしてくれた。 ... ここまでは予定通り。 部屋に入る暁斗さんにぴとっとくっついて、俺は次の作戦を思い出していた。 夕食は前日から仕込んでくれていた暁斗さんお手製のビーフシチュー。 美味しく頂いて、洗い物をするところまでは同じだ。 その後お風呂に入るんだけど... 千裕くんには『一緒に入ればいいじゃん』って言われたっけ。 流石にそれはって思ったけど、どうせなら大胆に... だよな。 深呼吸して、俺は暁斗さんの顔を見た。 「あ、あのっ、ああああ暁斗さんっ、」 「ん?どうした?」 「き、今日は、... お、おおおふ、おふ」 「... 大丈夫?」 「大丈夫!... その、お、お風呂... 」 「ああ、お風呂?いいよ、先に入って?」 ちがーーう!!!そうじゃない!! 確かにいつもは暁斗さんが先に入るけど! 心の中でツッコミを入れる俺。 ふぅ、ともう一度深呼吸してから、勇気を振り絞った。 「... ... 一緒に、入りたい... ... 」 「え... ?」 「だ、だめ... ?」 「... ... いいよ。じゃあ着替え取ってくるから、先に入ってて?」 消えそうな小さな声だったけど、俺の声はちゃんと暁斗さんに届いた。 見えないようにガッツポーズをしてから、俺は一足先にお風呂に向かった。 ✳✳✳✳✳ 実はこうなることも予想していて、いつもは入れない入浴剤を買っていた。 いかにも女の子が好きそうな、花の匂いがする乳白色のお湯。 透明のお湯じゃ丸見えだからって、俺なりに考えたんだ。 (... あとは暁斗さんが来るのを待つだけ... ) ドキドキうるさい心臓に何度も落ち着け、と言い聞かせていると、ガチャリとお風呂場の扉が開いた。 「うわぁ、いい匂い... ... って、響くん?」 ーーー誘ったのは俺。 だけどこの場に及んで恥ずかしさMAXで、ついお湯に顔をつけてしまった。 ザブン、と浴槽に暁斗さんが入ったのが分かると、心臓は口から出そうなくらいだった。 「ぷ、はぁ!」 「... どうしたの?」 「えっと、いい匂いだから顔にも... って思って!」 「確かにいい匂いだよね。これ、買ってきてくれたの?」 「あ、う、うん... 」 「ありがと。だから一緒に入りたいとか言ったんだね」 「そ、そう!そうなんだ... !あは、あはは... 」 そうじゃないけど... ま、まぁいいか。 作戦は予定通りすぎるくらいに予定通りだ。 ここまで頑張った自分、凄い。 向かい合ってお風呂に入る暁斗さん。 素肌を見ることって、あの日以来無くて、しかもあんまり記憶がなかったりして。だから首筋とか、鎖骨とか、胸元とか... ...ここぞとばかりに見てしまう。 暁斗さんの身体は日焼けの跡もなければ傷もない、綺麗な肌。 ぴっちり上げたお仕事モードの髪型のせいでおでこもよく見えるし、見れば見るほどイケメンだって痛感してしまう。 こんな人が俺を好きだと言ってくれただなんて。 (... ... 幸せ、なんだなぁ) 思えば思うほど、信じられないくらいに自分が幸せだということ。 同じお風呂に入る、だなんて... 考えられなかったもんなぁ。 「響くん、先に洗う?」 「え!?や、あとっ!後がいい!」 「そ?じゃあ先に洗うね?」 「うん!そうして!!!!」 その時俺は、この先のことを想像した。 湯船から出て身体を洗うってことは... 見られちゃうよな? 無理無理無理無理!そんなの無理だ! どうしてここまで考えなかったんだろう。 そうこうしているうちに暁斗さんは身体を洗っていて泡でモコモコになっている。 ヤバイ。このままじゃ俺の順番になってしまう... !!! (って!なんでこんなときに!!!) どうしよう、と悩めば悩むほど、空気の読めない俺の息子は元気になってきて、ますます浴槽から出れなくなってしまう。 (一緒に入ろうなんて言わなきゃよかった... !) 筒尾響、大ピンチ。 神様どうか助けてください。 祈る頃には暁斗さんは髪を洗っていて、俺の下半身はやんわりと大きくなっていて。 「お待たせ、響くん」 暁斗さんの洗うスピードは予想外に早くて、どうしようかとグルグル悩む俺。 「響くん?え、ちょっと!響くん!!!」 そういや今日、寒いかなーってお湯の温度上げたんだっけ? 普段は浸かっても5分くらいの俺には長湯しすぎたのかもしれない。 ぶくぶくとお湯に沈む俺を焦った暁斗さんが抱き抱えた、なんてこと、逆上せた俺は知りもしなかった。

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