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俺のアパートと真逆の位置にある千裕くんの家。 戻るのも面倒だったから、そのままお邪魔することにした。 途中のコンビニで食べ物と飲み物を買って、歩くこと10分、暁斗さんのマンションと同じくらい立派なそこの最上階が千裕くんの住んでいるところだと言うから驚いた。 「すごいね、千裕くん... 一人暮らし?」 「ううん。俺は居候っていうか、仮住まいっていうか... 」 「え?」 「事情があって、仕方なく。はい、散らかってるけど上がって?」 そう言って玄関のドアを開けた千裕くん。 入った瞬間、覚えのある匂いがして俺の足は止まる。 「... ... ち、千裕くん... もしかして... ?」 「あー、うん。ここ、アイツの部屋なんだよね。」 そう、それはあの煙たい匂い。 きっとヘビースモーカーの主任は暁斗さんみたいに換気扇の下で吸う、なんてことしないんだろう。部屋中に染み付いてる匂いが部屋の主が誰なのかを示していた。 リビングに向かいながら、千裕くんの住んでいたアパートが急に取り壊されることになって、仕方なく主任の部屋で暮らしていることを聞いたけど、それってつまり同棲だよな?とますます千裕くんが羨ましくなる。 一緒に住んでいれば時間も場所も関係なく出来てしまうのか... 「今日は響くんが来るから帰ってくるなって言ってあるから安心して?」 「え、そ、それは... 」 「大丈夫、どーせアイツのことだからどっかで遊んでくるでしょ。」 「え、えー... ... ... ?」 「それよりほら!食べよ!あ、響くんはビール?」 ローテーブルに買ってきた惣菜を並べ、冷蔵庫から缶ビールを出す千裕くん。 さっき買ってきた飲み物があるから、と断ったけど、どうやら千裕くんは宅飲みがしたかったらしい。 それなら頂こうかな、と言えば嬉しそうに笑う千裕くんは、やっぱり天使みたいに可愛かった。 ビールを飲みながら、仕事のことや俺の悩み、千裕くんと主任の話を聞いていると時間はあっという間に過ぎていく。 話せば話すほど千裕くんが優しくてとってもいい子だと分かり、俺はついつい不安を漏らしてしまう。 最近じゃ何かあっても暁斗さんがいるから眠れない日は無くて、お酒を飲むことも久しぶりだった俺のペースはぐんぐん上がり、苦手だと言っていた千裕くんも2缶飲みきっていて、人の家、しかも主任の、ということも忘れて冷蔵庫のビールをどんどん空にしていた。 「でさぁ、アイツほんっっとーにしつこいの!もう嫌んなるくらい!」 「いーじゃんかぁ!俺はしつこくてもいいからエッチしたいーっ!」 「もう言っちゃえば?抱いてくださいって!響くんのお願いなんだから大丈夫でしょー?」 「言えるわけないじゃんかぁ!!それに言えたら苦労しないってーの!」 「それもそうかぁ~」 そして話題はエッチの話に。 お互い挿れられる側、ということもあって、お酒の力で話はどんどん濃くなっていく。 「ねねね、千裕くんは最初痛くなかった?」 「痛かった!つか今も最初は痛い!」 「あのナカのビリビリってくるとこ、千裕くんにもあるの?」 「ビリビリ?あー、前立腺?あるある、あそこヤバイ、すぐイキたくなるーっ」 「前立腺?へー、そうなんだあ」 千裕くんは俺の大先輩。 聞きたいことをここぞとばかりに聞いてしまう。 それも絶対お酒のせいだ。 一度しか経験のない俺に、千裕くんは気持ちいいところとか、一人でスる時のやり方とか、おまけに主任とのエッチのこととか教えてくれて、欲求不満だった俺はムラッとしてきてしまう。 「あーあ... 、暁斗さんに会いたいーっ」 「会いたいだけぇ?」 「... エッチしたいーっ」 「ひゃ~、響くん溜まってるねぇっ!」 「そりゃ千裕くんと違うからねっ!」 「じゃあさ、抜きっこしよっか?」 「へ?抜きっこ... ... ?って、ちょ!ちひ... っ」 顔を真っ赤にした千裕くんは俺に跨がりなんとズボンの上から俺の息子に触れていた。 欲求不満だしムラムラしてきていた俺の息子は、それが千裕くんの手だと分かっていてもピクンと反応してしまう。 「ね、ねぇ!千裕くん!?ちょっと待って」 「んー?いいでしょぉ、抜き合いくらい。浮気じゃないしぃー」 「そうじゃなくて!!!流石にこれはだめだって!!」 「響くん、溜まってるんでしょ?これくらいいいじゃんかーっ」 「だめ!だめだって!千裕くん... ... っ!!」 完全に酔っぱらった千裕くんは、俺の言葉を無視して膨らむ俺の息子を撫でている。 暁斗さんとは違う触り方。暁斗さんがいい、そう思っているのに反応してしまう自分が嫌だ。 千裕くんを退かそうと、身体を押しても動じない。自分と同じ華奢だから、と千裕くんを甘く見ていた俺は絶体絶命だった。 「脱がしていーい?いいよねー?」 「だめっ!千裕くんっ!やだ、や... っ、」 「響くん、かぁーわい。ちょっとだけアイツの気持ち分かったかもぉ」 「お願いだから... っ!やめて... やだ、暁斗さんっ!!」 助けて。 届かないと分かっていながら口にした暁斗さんの名前。 その瞬間、ガチャリと玄関の方で音がした。

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