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なんで?どうして... ... ? どうしてここに? 「... ... ミキさんは?一人にしちゃ、だめでしょ?」 「帰ったよ、あの子は部下で資料を届けにきてくれただけだ」 「そう、なんだ。送らなくていいの?」 「... 響くんが来てくれたのに、なんであっちを優先しなきゃいけないの。俺は響くんが一番なの。大切にしたいのは響くんだけなんだよ... 」 暁斗さんの口から出てくる言葉、それは今の俺には受け止められないものばかりだった。 俺が一番なら、大切なら... なんであの言葉を俺には言ってくれないの? 「... ... 暁斗さんの考えてることが分かんない」 「っ、だから... !ちゃんと話そ?違う、俺の話を聞いて?」 「... やだ。もう俺分かったから、聞きたくない」 「何が分かったっていうの?響くんは勘違いしてる、悪いのは俺だけど... でも本当に響くんだけが好きなんだよ... っ!」 「... ... ... 好きなのは俺で、愛してるのはミキさんってこと... ?」 驚くほど冷静な自分の口から出た言葉に、暁斗さんの動きが止まった。 だってさ、そうとしか思えなかったんだ。 暁斗さんが嘘をついているようにも俺をからかったりしてるようにも見えないから。 俺を好きって言ってくれるのは嬉しい。 だけど俺は暁斗さんの『特別』になりたいんだ。 唯一無二とまでは言わないけれど、『愛してる』の言葉を貰えるくらいは特別になりたい。 そうなれないなら、今の状態が続くだけなら... ... 「... 暁斗さん、ごめん。やっぱり... 付き合うとか、告白とか、無しにしよう... ?」 始めに戻った方が楽だ。 俺が片想いしていた頃に、いや、それよりもっと前... ... いっそ暁斗さんに出会う前に戻れたら。 「な... に... いってんの... ?」 「俺は暁斗さんが大好きで暁斗さんの特別になりたい。だから知りたい、教えてってお願いした。」 「... だから、話をしようって」 「ううん、ミキさんのことは前にも言った。でもあのときから... 暁斗さんは教えてくれなかったでしょ?」 「教えるも何も... 気付いてると思ったんだ... 」 「気付く?... 俺、あんな可愛らしい人、見たことも会ったこともないよ... ?」 「違う、さっきのミキはミキじゃない。... ああもう、分かりにくいな... ねぇ響くん、とりあえず部屋に戻ろう?ここじゃ風邪引く」 「もう戻らない。俺、帰るから大丈夫」 暁斗さんの腕を解き、ベンチから立ち上がる。 その時俺は久しぶりに暁斗さんの顔を見た。 (なんで暁斗さんがそんな顔するの... ... ... ) 見たことない、辛そうな表情。 泣きたいのも辛いのも、俺の方なのに... 「響くん」 「... なに?」 「俺と来て。俺の話聞いて。」 「だからもういいって、ね?」 「良くない。... どうしても嫌って言うなら抱えてでも連れてくから。」 「... ... っ」 暁斗さんは本気だよって付け加えて、俺の腕を握った。 それが少しだけ震えていたのは、寒さのせいなのだろうか。 このままじゃ暁斗さんまで風邪を引いてしまう... 。 だから仕方なく一度暁斗さんの部屋に戻ることにした。 握られた腕はそのままで、逃げやしないのにしっかり力は強くなる。 暁斗さんも俺も、部屋に戻るまでの間一度も言葉を発することは無かった。 そして俺は再びあのドアの前に立つ。 もう帰ったと聞いたのに、ミキさんがいるんじゃないかって... ... いや違う、ミキさんが入ったこの部屋に足を踏み入れるのがこんなに嫌だと思うだなんて。足はドアの前で動かなくなる。 「... ... 入って、響くん」 「... ... ... ... ... 」 「響くん、お願い。」 「... ... ... ミキさんが... 居たの... ... やだ... 」 「... ... じゃあ少しだけ待ってて。車ならいい?鍵取ってくるから」 なんて我が儘言ってるんだろう。 だけどどうしてもこの先に入りたくなかった。 暁斗さんは俺にいつも羽織らせてくれるカーディガンと車の鍵を持って戻ると、また俺の腕を引いて駐車場へ向かった。 エレベーターの中でカーディガンを掛けられると、暁斗さんの匂いが鼻をくすぐる。 俺の大好きな暁斗さんの匂い。なのに苦しいと思ってしまう。 駐車場に着き、暁斗さんは俺を助手席に座らせるのかと思ったら後部座席の扉を開け、そのまま乗り込んだ。 真っ暗だから外から見えることはないと思うけど、きっとおかしな光景だ。     「... ... 逃げないよ?」 「でも、一応。」 腕を握ったまま暁斗さんは俯いている。 「... ごめん。」 「何がごめん... ?」 「電話のミキと、さっきのミキのこと。... また響くんを傷付けた。大切にするって言ったのに... 」 「いいよ、もう。暁斗さんはじゅうぶん大切にしてくれたよ。... 俺がミキさんを超えられなかっただけ。そうでしょ?」 「違う!ミキはそんなんじゃない。アイツにああいうのは感情なんて一切入ってないんだよ。もう何年も言い続けて、癖になってるだけで... ... っ」 「... 俺には言わないのに?」 「響くんは特別だから。今の状態で... その、簡単に言っちゃいけないと思ってた。」 暁斗さんは何度もミキさんとは何もないと言った。 だけど俺はそれを信じられない。 だって全部が言い訳に聞こえて、心がシャッターを閉じてる。 そんな俺に気付いたのか、暁斗さんは『もういい』と一言呟くと、握っていた腕の力を緩めた。 (... ... ... もう、終わりなんだ... ... ... ) もういい、話にならない。 きっとそういうことなんだろう。 ごめんね暁斗さん。 心が狭い俺で。 でも俺は子供みたいに我が儘で、暁斗さんの特別になりたかったんだ。 暁斗さんが俺を後部座席に残して車から出た。 ーーそれが俺たちの恋が終わり。 そう思うと、泣き虫なのに今まで出なかった涙が頬を伝った。

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