67 / 170
3-6
「響くーーーんっ!」
「千裕くんっ!」
「ごめんね、待った?」
「ううん、今来たとこだよ」
クリスマスと言えばプレゼント。
でもそれが中々見つからなくて、同じ状況の千裕くんと休みが重なった今日、俺たちはプレゼント探しにショッピングモールに来ていた。
千裕くんは相変わらず主任と住んでいるけど進展はないらしい。それでも幸せそうだからいいのかな?余計な詮索もせず、俺はお互いの好きな人に渡すプレゼントを探した。
「あーーーー、難しい」
「ね。」
「いっそプレゼントは俺!とかじゃだめかな」
「... ... それは恥ずかしくない?」
「だよなぁー... ... ... 」
財布にネクタイ、ペア物に食べ物、手作りも考えたけどしっくりくるプレゼントが無い。
というよりも、最近発覚したあることが俺たちを更に悩ませていた。
それはいつも通り暁斗さんの部屋でイチャイチャしていたとき、不意に目に入ったシャツのタグ。
それはブランド物に興味が無い俺でも知ってるような、ハイブランドのロゴだった。
恐る恐る暁斗さんに聞いてみたら、
『そうだよ、好きなブランドってわけじゃないけどシャツやスーツは全部ここのブランドの物かな』
って、サラッと言われた。
確かに暁斗さんのシャツを借りたとき、着心地いいなぁって思ったけど... ... ...
そのあとネクタイにも同じロゴを発見しちゃって、俺がいつぞやお礼で渡したネクタイの金額と比べたら、こんな安物よく渡せたなぁ!ってくらい差があって落ち込んだんだ。
そうなればきっと腕時計だってお高いのが確実だし、俺が買える範囲のモノって一体... ... ... ?
悩んで千裕くんに相談したら、主任も別のブランドだけど、同じくハイブランドで固めていたらしい。
血の繋がりは無いとしても、流石兄弟。
その二人に渡すプレゼントって、難易度が高すぎる。
「なんかなぁー... お金じゃなくて気持ちが大切って分かってはいるんだけど... 」
「あのブランド物で固めたとこ知っちゃうとなぁ... ... 」
「「はぁ... ... ... ... ... 」」
ショッピングモールのベンチでため息を吐く俺たち。
果たしてクリスマスまでにプレゼントを用意することが出来るのだろうか...... ... ... ?
✳✳✳✳✳
時を同じくして、とある喫茶店の喫煙席でタバコに火を着けるイケメンが二人。
こだわるつもりは無いけれど、統一することが癖になっているのはどちらも幼い頃からの癖だったりする二人が身に纏うのは、異なるブランドのオーダーメイドのスーツ。
既製品でも全くいいのに、父親がそうしろと言ったせいでそれが当たり前になってしまい、気付けば身の回りの物は同じロゴの物ばかりになっていた。
「んーで?暁斗はクリスマスどーすんの?」
「... 悩んでる。」
「めずらしー。お前のことだからホテルのスィートでも予約してると思ってたわ。」
「そうしたかったけど。... 付き合ってまだ日が浅いし、まさかクリスマスまでに付き合えるとも思ってなかったからね。」
異なる匂いの煙が天井を向いて上がる中、悩むイケメンとニヤつくイケメン。
平日の昼間、しかも喫茶店の喫茶店だというのに周囲の女性の視線は自然とこの二人に集中する。
その会話までは聞こえないにしても、見ているだけで目の保養になるのだから、そうなるのは当たり前なのかもしれない。
「弥生は?何か考えてるの?」
「そりゃあね。コツコツと作戦練ってましたから。」
「あっそ。そんな作戦練るくらいならさっさと付き合えばいいのに。」
「... ... ... うるさい。」
「でも自信あるんでしょ?」
「... んなモンねぇよ。そもそも作戦自体千裕が喜ぶかどうかすら分かんねぇっつーの。」
出会った時から世話焼きで自信に満溢れている俺様のくせに、千裕のことになると途端に慎重になる... それだけ本気なのに何故自分のモノにしようとしないのか。千裕が弥生のことを好きなことは、直接仲の良い訳でもない暁斗にすら丸分かりなのに... 。
「どうしようかなぁ、プレゼント。」
フゥ、と吐き出した煙を見つめながら、考えるのは愛しい存在の笑顔。
「欲しいモン分かれば苦労しねぇのにな... 」
ただ喜ぶ顔が見たい、その一心なのにこれほど悩まなくてはいけないなんて... 恋愛以上に難しいものはない。
「「... ... ... ... はぁ。」」
重なるため息の理由を知らない周りの女性客は、『キャア!』と黄色い悲鳴を上げる。
そんなこと勿論気にもしないイケメン二人はそれぞれの大切な存在へ電話を掛けた。
ともだちにシェアしよう!