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「うわっ、暁斗さんからだ!」 「俺もっ、アイツから!」 何処かの喫茶店での会話なんて知りもしない俺たちが相も変わらずベンチに座っていると、同じタイミングでスマホが震えた。 プレゼントはサプライズがいい、そう思った俺は、今日千裕くんと出掛けていることは内緒にしている。 クリスマス前にショッピングモール、なんてプレゼント探しをしているのがバレバレだからだ。... というより、何かあれば千裕くんを頼ってしまうことがバレているから言わないようにしていた。 「もっ、もしもし!」 『響くん?今、大丈夫?』 「うんっ!ど、どうしたの?」 『... 響くんの声、聞きたくなって。』 千裕くんの声が聞こえないように、立ち上がって距離を取る。 それでもきっと外出していることはバレてしまうだろう。 暁斗さんの優しい声が聞き取りにくいくらい、店内で流れる曲や迷子のアナウンスなんかで、この場所はガヤガヤとうるさかったから。 『ごめんね、出掛けてたよね?』 「え!?あ、うん、ちょっと」 『邪魔してごめん、今夜は会える?』 「うんっ、もちろん!」 『じゃあ楽しみにしてる。道中、気を付けてね?』 「暁斗さんも。お仕事頑張ってね」 今何処?と聞かれるんじゃないかとヒヤヒヤしながら会話する俺。 チラッと千裕くんの方を見ると、顔を真っ赤にしながら電話を切っていた。 暁斗さんと電話できるのは嬉しいけど、タイミングがタイミングなだけにソワソワしてしまい、早く切ろうとしてしまう。 「じ、じゃあね、暁斗さんっ」 『... うん。またあとで。あ、それと... 』 「え?な、なに?」 『... ... 愛してるよ、響くん』 なっ、なっ、なななな!?!?!?!? 今暁斗さんなんて言った... !?!? 俺の聞き間違いじゃ無かったら、暁斗さんはさっき俺に『愛してる』って... !? 電話の最後に、ミキさん... いや、主任に口癖って言っていたあの言葉、俺が欲しかった愛してるをこうもサラッと言われてしまうと、心臓はバックバクだ。 言葉を失い悶絶する俺は、千裕くんのことなんか言えないくらいに真っ赤な顔をしているだろう。 既に電話は切れていて、フラフラと千裕くんの座るベンチに戻るとお互いの顔を見て『何かあった』と察してしまう。 「... ... 絶対喜ばせたい」 「... ... 同じく。」 俺や千裕くんをここまで夢中にさせてしまう愛しい人に、とびきりの笑顔を見せてもらえるように、何か特別なプレゼントを見つけたい。   ベンチから立ち上がり、意気込みを新たにして俺たちは歩き出した。 ✳✳✳✳✳ 再び場所は喫茶店の喫煙席に戻る。 「... ... その口癖、止めるんじゃなかったっけ?」 「本当に愛してる子に言うなら問題ないでしょ?」 「うわー、それ俺に言うか?デレ暁斗。」 「うるさい。弥生だって相当らしくないこと言ってたじゃん?」 「... いいんだよ、千裕は特別なの。」 電話を切ったイケメン二人は愛しい存在の声を聞けたことで、顔には出さないものの多少気が良くなっていた。 「... ... で?何か聞き出せたの?」 「いーや。つか聞いたらバレるだろ」 「ま、そうだよな。」 「でもいいこと思い付いた。」 「へぇ、奇遇だな。俺もだよ。」 プレゼントは欲しがっているモノを、そう考えるイケメン二人がニヤリと口角を上げる。 その顔は『悪魔』だとか『鬼』だとか例えられることが多いのだけれど、愛しい相手に悪魔や鬼のような酷いことはしない。 ただ可愛い姿を見たいから意地悪をする... 小学生のように、好きな子を苛めてしまう、あれと同じ感覚だ。 「... ... 迷子のアナウンス。」 「アイツらの行動範囲からして、あのショッピングモールか。」 「やーっぱり一緒に居たか... 」 「クリスマス前、休みが重なる、響と千裕ってなれば予想通りだけどな。」 冷め始めたコーヒーを飲み干し、『目的地が決まった』と言わんばかりに立ち上がる。 お互い持ち前の器用さで仕事中であれど自由に行動出来ることを利用して、今日は一台の車でここまで来ていた。 きっと響が嫌がるであろう、タバコの匂いが充満した車内の助手席に暁斗は乗り込み、ハンドルを握った弥生はゆっくりと車を発進させた。

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