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カチカチと時計の針の進む音が聞こえる。  一時間、二時間と過ぎていくその針をジッと見つめる俺はソファーの上を離れなかった。 今日一日、何も食べていないのにお腹は空かないし、喉だって渇かない。 テーブルに置いたままのプレゼントが入った袋は、行き場を無くして悲しそうに見える。 25日が終わるまで、もう4時間あるかないか。 今電車が動いたとしても、日付が変わるまでに会えるのかは微妙な時間だ。 「...... 会えるだけで良かったのに... ... 」 ーーーもう諦めていた。 こんなことになるなら、約束なんかしなきゃよかった。 楽しみにしなきゃよかった。 約束するから、楽しみにするから落ち込むんだ... ... 。 そう思った時だった。 手元のスマホが震える。 「暁斗さん!?」 優しい暁斗さんの声を待ち望んでいた俺は、それをディスプレイも確認せずに出ると、更に落ち込むことになる。 『残念。弥生様でした。』 「... ... ... 何の用ですか」 『そうあからさまに落ち込むなよ。クリスマス楽しんでるかー?』 「... ... ... 知ってて電話してるんですよね?本当悪魔みたいな人... っ」 『バーカ、今日の俺はサンタクロースだ。』 何言ってるんだ、この人は... 。 電話越しでも分かる、主任が今煙を吐いていることが。 主任はきっと千裕くんからプレゼントを受け取って、それでタバコに火を着けたんだ。 俺がしてほしくても叶わなかったクリスマスの夢を、まさか電話越しだけど見せつけられるなんて。 悔しいのか悲しいのか、いや違う、嫉妬のような怒りに近い感情が沸く。 「用が無いなら切りますよ。千裕くんとクリスマス、楽しんでください」 『こらこら!待てよ!』 「... っ、なんなんですか!?俺は暁斗さんに会いたくても会えないんです!気持ち察してくださいよ... !!」 『だーかーら!今日の俺はサンタクロースっつったろ?お前の欲しい物をプレゼントしてやる。』 「はぁ!?いい加減にして... っ」 ムカついて電話を切ろうとした時、玄関先で物音がした。 誰かがそこに居るような、そして内鍵のかかった部屋のドアノブに鍵を差し込む音が。 『... 響、お前の欲しいプレゼントってなんだっけ?』 「... ...あ、 暁斗さんと... ... 暁斗さんと一緒にクリスマスを過ごすこと... ... 」 『... ... ... よかったな、ギリギリだけど間に合って。』 バタバタと廊下を走る足音が近くなる。 主任と通話中のスマホを放り投げて、俺はリビングの扉に近付く。 もしかして。もしかして、もしかして... ... ... 俺が開いたのが先か、それとも廊下側から開いたのが先か、バタン!と勢いよく開いた扉の先に居た人を見て俺は泣き崩れてしまう。 「っ、ごめんね、遅くなって... ... っ」 コートも羽織らず、出張に行った日に着ていたスーツ姿のまま息を切らすその人は、俺が会いたくて会いたくて仕方なかった愛しい人。 「電車動かないから... 地元の人とか色々頼ってこっちまで戻って... っ、最後は弥生に送ってもらったんだけど... 、スマホの充電切れて連絡できなかった... っ」 「... っ、ふ、うぇっ... 」 「約束守れなくてごめん、待たせてごめん」 「うっ、えっ、... っ、あきとさ... っ」 「会いたかった... ... 響くん... ... 」 冷たい身体が俺を抱き締める。 ギュッと力強く、折れちゃうんじゃないかってくらいに。 俺も暁斗さんの身体に腕を回し、思いっきり抱き締めた。 会いたかったって泣きながら、2日振りの暁斗さんの匂いに包まれて。 「... っ、くしゅん!」 「暁斗さん、お風呂入ろ?」 「でもクリスマス... 」 「俺は暁斗さんと一緒なら何処で何しようとクリスマスなの!」 何かしたいんじゃない。暁斗さんとただ一緒に居れたらいい。 それが俺の望む何よりのプレゼント。 すぐお湯を張って、俺たちは一緒にお風呂に入り、暁斗さんの出張先からどうやってここまで帰ってきたのかって話を聞いた。 「人生で初めてこんな雪の日にヒッチハイクしたよ」 って笑う暁斗さんは、俺の元に少しでも早く帰れるよう必死だったんだって。 「乗せてくれる人、いるんだね」 「うん。恋人が待ってるんですって言ったらみんな早く会えるといいねって言ってくれてさ。優しかったよ。」 「... ... ... っ!」 「どうしたの?顔赤くして」 「... ... こ、恋人っていうの... 恥ずかしくないの?」 「なんで?俺の恋人は響くんなんだし当たり前でしょ?これから先恋人って呼ぶのは響くんしかいないし。」 「~~~~っ!」 暁斗さんのストレートな言葉は、あれだけ落ち込んでいた俺を一気に復活させてくれる。 このままじゃ逆上せるって言ったら『それは困るなぁ』って暁斗さんはキスしてくれて、俺たちは急いでお風呂を出た。 プレゼントをいつ渡そうかソワソワしながら髪を乾かしてもらい、暁斗さんの甘いキスの嵐が降ってくればそれはエッチの始まりを告げる合図。 寝室に移動すると、プレゼントのことなんて忘れてしまうほど暁斗さんに愛された。

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