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... ... ... ... って俺!!!!
忘れてしまうほど愛された、じゃない!
忘れちゃダメだろう!!!!
ハッとしたのはエッチの後のまったりタイムだった。
暁斗さんの腕枕で髪を撫でられながら、ウトウトしていた俺は、ガバッと起き上がった。
「えっ?響くん?」
「ちょっと待ってて!!!」
全裸なこともお構いなしでリビングに置きっぱなしにしていたプレゼントを持って寝室に戻ると、何も知らない暁斗さんは不思議そうな顔をして俺を見ていた。
ベッドに戻り下半身を布団で隠し、俺はプレゼントの入っている袋を暁斗さんに差し出した。
ーー本当はもっと驚いてもらえるような渡し方を考えてたけど、それが思い浮かばなかったし早く渡したかったし。
「これ... ... ?」
「もう日付変わっちゃったけど... ... クリスマスプレゼント。」
「開けていい?」
「うん... 」
暁斗さんは喜んでくれるかな...
ドキドキしながら袋を開ける暁斗さんを見つめる。
袋からキレイに包装された箱を取りだし、中身を開けた暁斗さんは目を丸くして俺を見た。
「... 嬉しい。ありがとう、響くん... 」
「ジッポなら使うかなって思って... 持ってる?」
「ううん、持ってない。でも欲しかったから凄く嬉しい。」
「そっか... よかったぁ... ... 」
暁斗さんの手の中でシルバーのジッポが嬉しそうに光ってる。
刻印は隠すわけじゃないけど、内側に入れてもらったから多分手入れをするまで気付かないはず。
それもサプライズになるかなぁって思って、今は黙っておくことにした。
「ね、響くん。これで火着けて?」
「俺が?」
「うん。お願い。」
ベッド脇に置いてあったタバコの箱から1本取りだしくわえた暁斗さんは俺にジッポを渡した。
恐る恐るタバコの先にジッポの火を近付けると、部屋にはブルーベリーの匂いが広がる。
「... ... ありがと。なんかすっごく幸せ。」
「火着けただけなのに?」
「うん。好きな子が着けてくれるとか、最高に嬉しい。」
「... へへへ」
嬉しそうに笑う暁斗さんを見ると、俺も嬉しくてニヤニヤしてしまう。
それから暁斗さんは何度もジッポを見たり触ったりしながらタバコを吸っていて、プレゼントはこれで良かったんだなとホッとした。
「あ、そうだ響くん。ちょっと後ろ向いて?」
「え?あ、うん」
火を消した暁斗さんはそう言うと、ゴソゴソ物音を立ててから俺の首にヒヤッとする何かを掛けた。
「ん、もういいよ」
「暁斗さん?」
「欲しいもの分からなかったから、俺のあげたいものにしちゃった。」
「え... ... ... ?」
言葉の意味が分からず、首元を触るとそこには何かがある。
「鏡、見ておいで?」
そう言われて洗面所に向かうと、鏡の中の俺の首元にはキラッと光るネックレスがあった。
ヒヤッとしたのは多分ネックレスのチェーンで、トップにプレートのようなパーツがついている。
シンプルで男の俺が着けていても不自然じゃないそれが、暁斗さんからのプレゼントだと気付くのに時間はかからなかった。
「あっああああ暁斗さぁぁぁあん!!!」
ダッシュでベッドに戻り、目を細めて俺の首元を見ている暁斗さんに抱き付いた。
まさか自分がプレゼントを貰うだなんて...
考えもしなかっただけに嬉しくて言葉が出てこない。
やっと言えたのは『ありがと』の一言で、プレートを握りながら俺は暁斗さんの鼻にキスをした。
「それ、首輪も兼ねてるからね?」
「首輪?」
「そ。俺の響くん、ってね。」
「じゃあずっと付ける!ずーっとずーっと!」
「そうしてくれたら嬉しいな」
暁斗さんが俺にくれた、暁斗さんのって証。
それに何度も触れながら、今度こそ暁斗さんの腕枕で眠りについたのは26日に日付が変わって数時間後のこと。
25日のクリスマスを過ごせたのは少しだけだったけど、暁斗さんが必死に帰ってきてくれたことにプレゼントを喜んでくれたこと、そしてネックレスを貰ったことで『嬉しい思い出』に変わった。
ちなみに...
これは後日気付いたんだけど、プレートの裏側には小さく刻印が入っていた。
それは俺がジッポに入れたものとほとんど同じでびっくりしたんだけど...
『A to H 1122』
暁斗さんから俺へ、って意味に数字が4つ。
... これは俺と暁斗さんがお付き合いを始めた日なんだ。
覚えてないだろうなって、俺は『H to A 1122』って刻印してもらったんだ。
まさか暁斗さんが覚えていて、しかも同じ意味をもつ文字を刻印してくれただなんて。
ネックレスも嬉しいけど、それ以上に嬉しかった。
きっとまだ暁斗さんはジッポの刻印に気付いていない。
暁斗さんが刻印を見つける日を心待ちにしながら、今日も俺は暁斗さんのタバコにそれで火を着けた。
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