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いやー、恋愛ゲームってすごい。
本当に恋愛してる気持ちになっちゃうんだもん。あ、もちろん疑似恋愛って分かってて、リアルで俺の一番は暁斗さんなんだけど、画面の中の誠さんはグイグイ迫ってくるから『キャー』とか『ひゃぁぁ』とか、俺の口から黄色い悲鳴が止まらない。
このゲーム、選択したキャラクターがトラブルやイベントとか日常の会話で距離を詰めようとしてくるんだけど、その時の返答を4つから選べるようになってて、その選択次第でエンディングも変わるらしい。
千裕くんはもう主任似のキャラクターと付き合ってて、ラブラブに加えてイチャイチャらしく、『付き合ってからがヤバイ~!』とメッセージで教えてくれた。
「俺も誠さんと付き合うぞー!!!」
それを知ってから俺にも火がついて、3日は一日中ベッドの上で画面の中の『誠さん』と過ごした。
... 別に暁斗さんのことを忘れるほど夢中になってた、って訳じゃないんだよ?
暁斗さんの実家は年始は親戚が集まって盛大にお祝いするって言ってて、もしかしたら連絡もあまり取れないかもって予め聞いてたんだ。
だからメッセージも電話も、無理しなくていいって言ったのは俺。
主任も一緒だし、大人しく5日に帰ってくるのを待ってる方が迷惑掛けないし... ...
ーーー寝落ちするまでゲームに没頭した俺は、暁斗さんと誠さんが俺の取り合いをするっていう幸せな夢を見た。
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Side AKITO
「あらー、暁斗くんっ!相変わらずイケメンねぇ」
「ほんとほんと!弥生くんもすっかり落ち着いて... 」
「二人並ぶと目の保養になるわぁ... ... 」
再婚した、と言っても何ら変わらない親戚付き合い。
弥生は一時期荒れていたものの、今はすっかり落ち着いて対応も身のこなしもしっかりしている。恋人が出来るまではこの集まりも『暇潰し』と思えていたけれど、響くんを残してきた俺は一刻も早く帰りたくて仕方なかった。
連日朝から晩まで酒、酒、酒...
年齢的にまだ若い方に入る俺と弥生は断ることが許されなくて、電話しようにも解放されるのは日付が変わる頃。
もしかしたら寝ている?そう思うと中々電話出来なかった。
出張で3日離れただけで寂しがって、クリスマスは大泣きしていたあの響くんのことだから、きっと無理してるに違いない。
「あーきと。おばさま呼んでたよ」
「... 弥生が相手してよ。今一服中。」
「散々したっつーの!てか千裕電話出ないんだけど、響と一緒?」
「知らない。俺連絡出来てないし。ま、あの二人のことだから一緒かもね?」
響くんは寂しさを一人で抱えるタイプだから、千裕くんを誘って一緒に過ごしてる可能性は大だ。千裕くんが酒を飲まなければ、達郎なんかと一緒に居られるよりもだいぶ安心だしその方がいい。
きっと二人は一緒、そう思いながらタバコの火を消して、弥生と一緒に宴会会場に戻った。
「あっやっと戻ってきたわぁ~!」
「ほらほら暁斗くんっ、おばさんの注いだお酒、飲んで~」
俺より倍くらい年上、自らおばさんと言うこの人達の相手がこれほどまで苦に感じるとは。
若い女の子のように、ガツガツ迫ってくるよりいいじゃないかと去年までは思っていた。
「暁斗くん結婚しないの?彼女は?」
「知り合いのお嬢さんが可愛くてねぇ」
「一回お見合いしてみない?」
でも今年は違う。
響くんという大切な存在がいるのに、それをハッキリこの場で口に出来ないもどかしさ。
同性同士の付き合いを今ここで言ってしまえば京極家全体に一気に広がるだろう。
そうなればきっと頭の固い奴らが反対する。
なんとかして別れさせようとすることは目に見えていて、それが響くんを傷付けることになる。
もう絶対に響くんを傷付けたくない。
離れたくないし離したくない。
だから上手く立ち回って、文句を言わせない立場になってから響くんを紹介する...
そう、俺は決めていた。
「... 素敵な恋に落ちるまで、結婚は考えられないですね。」
そう一言、作り笑いを添えておばさんに言えば一先ずこの話は終わる。
でもこれを何度も何度も繰り返すのが酔っ払ったおばさんの怖いところ。
痛む頭を抱えながら、タバコを吸いに外に逃げる回数が増えたのは言うまでもない。
「... ... ... 響くんに会いたい... ... ... 」
今何をしてるのだろうか。
泣いていないだろうか。
一人で眠れているだろうか... ?
声が聞きたいけれど、もうすぐ日付が変わる。
明日一日耐えれば、明後日には帰ることが出来る。
寝ているかもしれない、いや、一人でも眠っていてほしい。
スマホを握りしめたまま、響くんに電話を掛けることのできない俺は真っ暗な夜空を見上げては響くんの笑顔を思い出していた。
Side AKITO END
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