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1月4日 『響、俺の女になれよ』 この日も昼前に起きてから、ベッドの狭さが憂鬱になった俺は合鍵を使って暁斗さんのマンションへ向かった。 勝手に入っていい、と許可は得ていたものの、ベッドのサイズを理由に暁斗さんんちに行くっていうのはなんだかなぁ、と引目を感じながら。 でもやっぱり広いベッドの上でゴロゴロしながらするゲームは格別で、夕方になった今まで俺は延々とスマホに向かっていた。 そしてようやく!画面の中の誠さんから告白された。 「待ってましたぁぁぁぁああ!!!」 『付き合う』を選択し、俺は念願の誠さんとお付き合いすることができた。 画面の中では恥ずかしそうに俯く誠さんがいて、暁斗さんはあんまりこんな顔しないよなーって思うと新鮮で、胸キュンは止まらない。 千裕くんにそれを報告するメッセージを入れると、千裕くんは絶賛イチャイチャ期らしく返信は『ヤバイ』がほとんどだ。 イチャイチャ期って何がどうヤバイのか、気になる俺は早くゲームを進めたくて仕方ない。 最初は暁斗さんが帰ってくるまでの暇潰しって思ってたけど、今は明日暁斗さんが帰ってくるのがちょっとだけ残念だったりする。 ... 暁斗さんが居るのにこのゲームをするのは、なんとなーく浮気みたいだったから、暁斗さんが帰ってきたらアンインストールするつもりだったんだ。 だからそれまでに、エンディングは無理だとしてもイチャイチャ期に入りたい。 「待ってろよー!誠さんっ!!」 画面の誠さんはデートに誘ってきた。 もちろんOKするを選択して、俺はゲームの中で暁斗さん似の誠さんとデートを楽しんだ。 そもそも誠さんはツンデレクールキャラ。 キャラクター紹介にあったあの姿はキメ顔なのか、中々見ることは出来ない。 性格は主任に近い俺様で、『おい』とか『お前』とか、滅多に登録した名前で呼ぶことはないくらい。 ゲームの中でガチャがあって、それに千裕くんの言っていたドキドキポイントを使うんだけど、そのガチャでは主にキャラクターに着せる服とか小物がゲットできる。 ポイントの少ない俺はこの日ようやくガチャを回せるまでポイントが到達し、ベッドの上で正座しながら初めてのガチャに挑戦した。 今の俺が狙うのは、他でもなくトータルコーディネートされた洋服セットだ。 ハズレは小物や下着、当たりは季節感溢れる袴セットと幅のあるガチャだけど、どうにかして誠さんを今よりイケメンにしたい... ! 「いっけぇぇぇ!!!!」 祈るような気持ちでガチャを回した俺。 結果が表示されたと同時に部屋のドアが開いたことなんて、気付きもしなかった。 ✳✳✳✳✳ Side AKITO 「いやー、まさかお開きがこんな早まるとは!」 「予想外だけど有り難い。」 5日まで拘束されると思っていた俺たちに、『今年はもうお開きにしよう』と神のような言葉を投げたのは俺の祖父にあたる人だった。 連日飲み過ぎたせいで、頭も胃もおかしくなると皆が口にし、見兼ねてストップをかけてくれた。 そのおかげで俺たちは一日早く帰宅できることになった。 夜の高速道路を飛ばすこと二時間、愛しい響くんの元へ少しでも早く帰りたいと思う俺。 これほどまで会いたいと思うのは、過去にも未来にもきっと響くん一人だけ。 「年始早々のサプライズになるな。」 「だね。あー、早く会いたい... 」 きっと驚いた顔して俺の胸の中に飛び込んでくるだろう。 涙目になってるかもしれない。 あの細い身体を抱き締めて、3日分たっぷり甘やかして愛したい... ... ... ... ... 弥生をマンションの前で降ろし、急ぐ気持ちを押さえながら自宅マンションに戻った俺は小走りでエレベーターに向かった。 あと少し、あと少しで会えるーーーー 「ただいま、響くんっ!」 玄関には響くんの靴がある、ということはここに響くんがいるのは間違いない。 そもそも響くんがここに居ると信じていた俺は無意識で響くんの名前を呼んでいた。 「響く... 」 「ぎゃぁぁぁ誠さぁぁぁあん!!かっこいいよぉぉお!似合うよぉぉぉぉ!!!!」 だがしかし。 荒々しくリビングの扉を開けた先に響くんの姿は無く、変わりに悲鳴のような叫び声と俺の知らない名前が寝室の扉の向こうから聞こえた。 「やっば、まじかっこいい!!スクショして千裕くんに... 」 そっと扉を開くと、充電器に繋いだスマホに釘付けの響くんの姿があった。 俺の帰宅に気付かないほど夢中になるような趣味が響くんにあったのか? それとも... ... ... 「あー、やっぱ誠さんは世界一かっこいいよぉ~~っ!!」 ーーブチン。 誰だ『誠さん』って。 頭の中の何か大切な線が切れた音がすると、寝返りを打った響くんと目があった。 「... ... ... え... ... ... あ、きとさん... ?」 「... ただいま、響くん。随分楽しそうだね?」 ニヤリと口角を上げた俺は、まだ知らぬ『誠さん』という存在に嫉妬心で溢れていた。 「どういうことか、説明してくれる?」 ... ああ、今日は優しく抱いてあげようって決めていたのに。 焦った表情で何かを話そうとしている響くんに背を向けて、クローゼットから一本のネクタイを取り出す。 「浮気されるくらいなら縛って閉じ込めておけばよかった。」 それを響くんの目を隠すように結び付け、俺は響くんの口を塞ぐ。 「お仕置き、しなきゃね」 悪いのは響くんだ。 煮えるようにふつふつと沸くこの気持ちを抑えることなんて出来ない俺は、響くんの言葉なんて全く頭に入らなかった。 Side AKITO END

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