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「うわーーー!!!でっかー!!!」 「おい千裕、ちょっと落ち着け」 「あ、暁斗さんっ、本当にここ?」 「うん、そうだよ?」 暁斗さんのあの言葉から1か月後、お正月ムードもすっかり落ち着いてバレンタインがすぐそこに迫った2月の土曜日、俺と暁斗さん、千裕くんと主任の4人は明らかにお高い雰囲気を出す大きな旅館の前に居た。 なんと驚くことに、宿泊費用は暁斗さんと主任持ち。こんな所、きっとすごい高いだろうに... と、申し訳なくなってしまう。 「ほら、チェックインするよ」 「あ、う、うん」 「温泉たのしみぃー♪」 「俺は酒がたのしみぃー」 ... ... そんなこんなで、千裕くんと主任も居るけど、俺と暁斗さんの初めての旅行が始まった。 案内された部屋は広々とした和室。 久しぶりの畳の匂いと、部屋から見える景色に俺のテンションが上がる。 部屋は襖で区切れるようになっていて、寝るときは俺と暁斗さん、千裕くんと主任でちゃんと別けて寝るらしい。 ... 暁斗さんは『弥生と同じ部屋で寝るのは嫌』って言って二部屋予約しようとしてたけど、それじゃ高くなるからって俺が必死で止めたんだ。まさかこんな立派な宿だと思ってなかったから、二部屋にしなくてよかったと心底思う。 宿から歩いて数分の場所には観光客向けの店がズラーッと並んでいて、その先には恋愛成就で有名な神社があるんだとか。 俺はその神社に行くことを楽しみにしていた。 暁斗さんとの恋は成就してるけど、これからもずっとずっと一緒に居れるようにお願いしたくて... 。 「響くん、行こっか」 「うん!!」 荷物を置いた俺たちは、早速出店と神社に向かうことにした。 昼間とは言っても2月の外はかなり冷える。 今年新調したコートにマフラーをしても、吐く息は真っ白。 ちなみにマフラーは暁斗さんと色違いで、コートはお互い選びあっこしたんだ。 冬は流石にシャツ姿じゃなくなるだろう、って期待してたのに、やっぱり暁斗さんの普段着は変わらなくて... せめてコートくらいは!って張り切って俺が選んだ。 ゲームの中の誠さんに似せたわけじゃないけど、ブラウンのロングコートは暁斗さんによく似合ってて、思わずニヤニヤしてしまう。 暁斗さんが選んでくれたのは、ネイビーのダッフルコート。 そのポケットに両手を入れて、俺たちは買い食いやお土産探しを楽しんだ。 「んーーー!これおいひい!!」 「肉まん?」 「そう!肉汁やばっ!暁斗さんも食べる?」 「うん。... ... ん、ほんとだ。美味しいね。」 暁斗さんが選んだ旅館のある場所は、車で4時間くらいかかる場所。 だから知り合いに会う可能性はゼロに近くて、それを知ってか知らずか今日の暁斗さんは積極的だった。 俺が食べる?と聞いた肉まんにかぶり付いたり、さりげなく腰に手を回して歩いたり、とにかく『デート』って感じが凄かった。 今までのデートは基本的に夜だったし、昼間こうやって堂々と出来るのは初めて。 その距離感が嬉しいけれど緊張してしまう。 一応土曜日ってこともあって、それなりに観光客で賑わってる中、千裕くんと主任は手を繋いで歩いてて。マジか!ってびっくりしたんだけど、本人たちがそれでいいなら... いいのかな。 そうそう、そう言えばこの二人もついにお付き合いを始めたらしい。 詳しく聞きたかったけど、それを知ったのはこの旅行の道中、しかも旅館に到着する寸前だったからまだちゃんと聞けていない。 だからなのか、いつもより主任の表情は柔らかくて、千裕くんの我が儘が炸裂しても『しょーがねーな』って言いながらも嬉しそうにそれに付き合ってる。 (よかったね、千裕くん... ... ... !) 楽しそうな二人を見ていると、暁斗さんがツンと俺の頬をつついた。 「なーに見てんの?」 「え?」 「響は俺とデート中でしょ?余所見しないの。」 「~~~~~っ!」 突然の呼び捨てに俺の胸はキュンと跳ねる。 暁斗さんはそれを見て微笑んで、『可愛い』って頬にチュッとキスをした。 こんなところで!!って言ったら、『こんなところだからでしょ?』って答える辺りが意地悪なんだけど、それでもいいやって思えてしまうのは旅行マジックなのだろうか。 「次はどのお店見たい?」 「... ...あ、あそこ... っ 」 「あそこって... また肉まん?」 「好きなんだもん... だめ?」 「... いいよ、響くんは肉まん好きだったのかぁ」 他愛ない会話も、実は肉まんが大好きってことがバレたことも、今は幸せで幸せで仕方ない。 暁斗さんが買ってくれた本日2個目の肉まんは、暁斗さんが『あーん』して食べさせてくれたせいで... 肉まんなのになんだか甘く感じた。

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