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「あ、暁斗!喫煙所みっけた!」
先を歩く主任が振り向いて暁斗さんに手招きする。
「1本吸ってきていい?」
「うん!1本と言わず好きなだけどーぞ!」
「はは、ありがと。」
暁斗さんはクリスマス以降ずっと俺がプレゼントしたジッポを使ってくれている。
刻印のことはまだ何も言われてないから、もしかしたら言わなきゃ気付かないのかもしれない。
だけどそんなこと気にならなかった。
あのジッポは、やっぱり暁斗さんにとても似合っていたから。
喫煙所の側のベンチで千裕くんと座って待ってる間も、遠くで光に反射して光るそれが『俺の暁斗さん』って主張してることが嬉しかったから。
暁斗さんのタバコを吸う姿は俺の中の胸キュンランキングでも上位に入るカッコよさ。
何かにもたれて、ちょっとだけ気だるげに吸う所がいつものしっかりした暁斗さんとのギャップがあってキュンとしてしまう。
身体に悪いと知ってはいるけど、その姿を長く見ていたくて、『もう1本!』って無茶なお願いをしたことがあるくらいだ。
そんな暁斗さんは主任と楽しそうに会話していて、たまに見せる笑顔がまたかっこいい。
... ... あんなイケメンが俺の恋人だなんて。
たまに信じられなくなるのも無理ないよなぁ。
「ちょっとちょっと!響くん!?」
「ふぇ?」
「ふぇ?じゃないよー!やっと二人になったんだから、俺の話聞いて!!」
「あ... ごめん、暁斗さんに見とれてた... 」
「うわぁー!今ノロケたよね!?くっそー、流石先輩カップル... !!」
「いや... っ!あ、それより話、聞かせて?」
千裕くんが言う話とは、きっと主任と付き合うことになった経緯だろう。
俺も気になっていたから、二人が戻る前に是非とも聞かせてほしいと千裕くんの顔を見る。
「あのね、実はーーーー」
ニヤついた表情で千裕くんが口を開いたのと同時に、俺の肩を誰かがポンと叩いた。
「ねっ!お兄さんたちカッコいいねー!」
「私たち二人なんだけど、一緒に回らない?」
それは真冬だと言うのに短いスカートにブーツ姿の女の子二人組だった。
ギャルって訳じゃないけど、化粧も髪の色も派手で、正直苦手なグイグイ来るタイプ。
「え、えーと... ... 連れがいるので... ... 」
「連れ?あ、彼女?」
「い、いや... ... 彼女?ではないんですけど... 」
彼女じゃなくて彼氏です!
と言いたいけれど、それだと俺も彼氏で暁斗さんも彼氏、千裕くんも彼氏だし主任も彼氏だよな??
ダメだ、なんて言ったらいいんだろ...
っていうより恋人は男です!ってハッキリ言ってもいいのだろうか... ??
千裕くんは突然のグイグイ系女子の登場にビビったのか、俺のコートの裾を握って俯いている。
ってことは俺が断らなきゃ... いけないんだよな?
「じゃあいーじゃんっ!」
「そうそう!ってか近くで見るとお兄さんめっちゃ可愛い顔してる!やばぁ~っ!」
「いや可愛くない... ってかすいません、本当無理なんで... 」
「えー?なんでー?ウチらと回ろうよぉ!」
「彼女じゃないなら連れのこと気にしなくていいし!ねっ!」
ああもう、しつこいなぁ... !!
暁斗さんには許可取ってないから言っても大丈夫なのか心配だけど、やっぱ『彼氏がいます』って言わなきゃ... !
「はいはーい、ごめんねキミ達?」
「この子達は俺らの連れなんで。」
俺が決意した瞬間、女の子達の背後に登場したのは俺と千裕くんの彼氏、暁斗さんと主任だった。
「っえ!?ちょ、連れもイケメン... !」
「なにこの顔面偏差値... 信じられない!ね、ねぇ、連れさんも一緒に!みんなで回りませんかぁ!?」
そりゃそうだろ。暁斗さんはめちゃくちゃカッコいいんだ。
ついでに主任も、『夜遊び激しい系』って言われる程に認めたくないけどイケメンなんだ。
それに言わせてもらえば連れもイケメン、じゃなくて、連れがイケメンなんだ!!!
「あー、ごめんね?それは無理。」
「そうそう。今可愛い恋人とデート中で。」
暁斗さんはそう言うと、女の子が俺の肩に置いた手を払い除けて俺の腕を引いた。
「彼女がどうこう言ってたけど... この子、俺の可愛い彼氏だから。」
そしてそのまま引き寄せられた俺は、すっぽりと暁斗さんの腕の中に収まった。
そのあと俺と千裕くんに声を掛けた女の子達は顔を真っ赤にしてペコペコ謝ってから、逃げるように走っていった。
俺も顔は真っ赤になっていて、暁斗さんの腕の中でフリーズ。
... だって、こんな所でハグされて、しかも『俺の彼氏だから』って... !!!
「ったく... これだからウチの子は。可愛すぎて離れられなくなるでしょ?」
「... ... ... ご、ごめんなさい」
「もう離れないからね。次から喫煙所にも連れてくから。」
そう言った暁斗さんは、俺の手に指を絡めて歩き出した。
「あっ、あああ、暁斗さん!?」
「なーに?」
「手!!!」
「恋人と手繋いじゃ、ダメ?」
「いやっ... そ、そうじゃなくて... ひ、人目が... ... ... 」
「どーせ知り合いなんて居ないよ。周りだってゲイカップルがいるんだーってくらいにしか思わない。それより俺は響くんは俺のって見せつけたいんだけど?」
... ... そこまで言われて、この指を離せる訳が無い。
堂々の彼氏発言とこの絡んだ指に、俺の顔は真っ赤に染まったまま。そんな俺を見て満足そうに笑う暁斗さんは意地悪だけどたまらなくカッコよくて、ますます『好き』って気持ちが溢れ出す。
「... ... 今日の暁斗さん、カッコ良すぎる... 」
「そう?旅行はまだまだこれからなのに、こんなんで顔真っ赤じゃ持たないよ?」
「なっ... ... !?な... ... !?」
「ははは、かーわい」
「からかわないでよ!!もぉ!!!」
... 端から見たらゲイカップルがイチャついてるって状況だけど、もうそんなことどうでもいい。
誰に何を言われようと俺は暁斗さんが大好きだ。
繋いだ指にキュッと力を込めて、俺と暁斗さんは恋人繋ぎで神社までの道のりをゆっくり歩いた。
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