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「っん、... は... ぁ... っ」
「気持ちよかった?」
「ん... ... っ、... ... でも... 足りない... っ」
「... どうして欲しい?」
「... ... 暁斗さんの... っ、暁斗さんのおちんちんで... 気持ちよく、して欲しい... っ」
「はは、上出来。」
恥ずかしくて仕方ないはずなのに、一度口にしてしまうと二度目は案外すんなり出てしまう言葉。
暁斗さんは俺に着けたコンドームを新しいものに変えてくれてから、後孔の準備をしてくれた。
次にイクのは暁斗さんがナカに入ってから、そう思って拡げられる間我慢すれば、暁斗さんは『いいこ』って褒めてくれた。
「お利口さんの響に、ご褒美あげる。」
グチュン、とナカに暁斗さんが入ると今日一番の気持ちよさが俺を襲った。
あんなこと言ったせいか、いつも以上に興奮してるのが自分でも分かる。挿れただけなのにビリビリ痺れて意識が飛びそうなんだもん。
「っ、響のナカ、いつもより熱い... っ」
「だっ... て、んあっ」
「それに... ギュウギュウ締め付けてくる... っ、」
「あっ!やっあ... っあ、ああっ」
「... 一回イクね?」
「あきとさ... っ!あきとさんっ、あああ!!」
二度目の絶頂は暁斗さんと同じタイミング。
いつもより早くイッた暁斗さんは、コンドームを付け替えてからすぐに俺のナカに戻ってきた。
『次はもっと気持ちよくしてあげる』
って耳朶を甘噛されて、俺の下半身を擦りながら動いてくれた。
ご褒美って言葉通り、俺が気持ちよくなるところばかり突いて弄って、何度も何度も『好きだよ』『可愛い』『愛してる』って囁いてくれた。
まさに飴と鞭ってやつなのかな... ?
あんあん喘ぎながら、ボヤッとしてきた頭でそう思う。
「あ... っ!あきとさん... ... っ!!」
「... っく、」
暁斗さんが激しく腰を打ち付けて何度目かの絶頂を迎えたとき、俺の意識はスゥッと遠退く。
暁斗さんが何か言ってたような気がするけど、その声はもう聞こえなくて... ... ... ... ...
「あ... きとさ... ... だいすき... ... ... 」
多分、俺の覚えてるこの日最後の言葉は、意地悪だけど甘くてエッチな愛しい人へ、変わることの無い自分の気持ちだった。
✳✳✳✳✳
... ... ... ... ... きくん!
... ... ... ひびきくん!!!
「響くんってば!!!」
「っ、うわぁ!?」
目を覚ますと部屋は明るくて、目の前に千裕くんの顔がドアップがあった。
「早く朝ごはん食べにいこーよ!お腹すいたー!!」
ケロッとした顔で浴衣に着替えている千裕くんは早く早くと俺を起き上がらせる。
するとズキンと鈍い痛みが腰に走り、そういえば... !と思い出すのは昨日のエッチ。
並んで敷かれた布団の横に暁斗さんの姿は無くて、俺は着た覚えの無い浴衣をちゃんと着ていて、昨日使ったコンドームもティッシュも何処にも見当たらない。
(... ... ... もしかして、あれは夢... ... ... ?)
腰の痛みはあるけれど、そう思ってしまうくらいに昨日の事情を何一つ残さないこの部屋が不思議だった。
「どうしたの?」
「... ... き、昨日の夜、さ... 」
「昨日の夜?... ああ、俺が日本酒飲んで潰れちゃったやつ?」
「え?ち、千裕くん... 覚えてないの... !?」
「うーん、弥生に一口貰ったって聞いたけど正直全く記憶無くて... まさか俺また響くんに!?」
「あ、ち、違う違う!大丈夫だよ!覚えてないならいいんだ!あ、あはは... ... 」
そして千裕くんは昨日のことを覚えていないらしい。
散々エッチな声を聞いてしまったのに、あれを覚えていないなんて...
まぁ、俺の声とか言ったことも覚えてないならそれはそれで都合がいいんだけど。
「おーい、響起きたかー?」
「あ、弥生。起こしたよー!」
「おはよ、響くん。」
そして襖の向こうから現れた主任と暁斗さんもいつも通り。
暁斗さんに関しては、昨日と今朝で呼び方が変わってる。
昨日の意地悪な暁斗さんは『響』って呼んでたけど、『響くん』っていつもの呼び方になんだか安心してしまう。
もしかしてもしかすると、主任も暁斗さんも実は酔っぱらってて記憶無い... とか?
... ... ... あり得る。ここのお酒は度数が強めって仲居さんが言ってたし、あり得るかもしれない。
「... ... おはよ!あー!お腹すいたっ!!」
千裕くんと主任のイチャイチャシーンも、意地悪でエッチな暁斗さんも、俺が言った恥ずかしい言葉も、全部全部俺だけが知ってる...
そう思ったらなんだか気分が良くなってきた。
俺だけ記憶があるっていうのも、今回は良かったのかもしれない。
四人並んで朝食が用意された部屋に移動し、仲良く食べれて昨日入り損ねた温泉でゆっくりすればあっという間にチェックアウトの時間。
明日からまたいつも通りの日常に戻ってしまうのが寂しく感じるほど、この二日間は楽しかった。
帰りの車内では『次はどこ行く?』なんて話で盛り上がったり、やり損ねた鍋パーティーの計画を練り直したり、長いはずの道のりも気付けば見慣れたいつもの道に戻ってきてしまい、主任のマンションで二人を降ろせば車内は一気に静かになる。
「... ... はぁ、楽しかったぁ... ... 」
「温泉気持ち良かったね」
「うん!ご飯も美味しかったし!肉まんも!」
「はは、そうだね。」
ゆっくりと暁斗さんのマンションへ向かう車。
喋りすぎたせいかウトウトする俺。
「... ... ゲームのイベントなんかより、よっぽど刺激的だったでしょ?」
眠気を吹き飛ばすような暁斗さんの言葉は、俺の顔色を真っ青に変える。
「また、苛めてあげるね」
それは暁斗さんが酔っぱらって記憶を無くしてなんかないって、そう決定付ける一言。
ニッコリ微笑む暁斗さんは、『可愛かったなぁ』って呟いた。
ーーーそれからすぐに、俺はあのゲームのアプリをアンインストールした。
これ以上、嫉妬焼きな彼氏を怒らせたらどうなるか... ... ... 。
考えるだけでも恐ろしかったから。
例えゲームの中だとしても、もう他の人は見ない!と決めた俺だった。
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