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4 おまけ。
旅行から数日後... ... ...
「あ... ... 暁斗さん?どうしたの... ??」
いつも通り仕事帰りに暁斗さんのマンションに行くと、真冬だと言うのに暁斗さんは浴衣姿だった。
そしてニコニコしながら俺に差し出したのは暁斗さんが着ているものと色違いの浴衣。
「旅行中、心残りがあったんだ。だから... ... ... はい、これに着替えてきて?」
心残りという言葉が引っ掛かりながらも、俺は言われた通り浴衣に着替えて、暖房がガンガン効いたリビングに戻った。
イマイチ着方が分からなくて、適当に帯を結んだだけだけど... まぁいっか。
「ど、どう?」
「うーん!可愛いっ!写真撮っていい?」
「え!?あ、う、うん... 」
「こっち向いて... そうそう、はい、笑って」
よく分からないけど、暁斗さんの心残りって浴衣姿を写真で撮りたかった、ってことなのかな?
カシャカシャとシャッター音が何度かした後、暁斗さんは満足そうにスマホを置いた。
「珍しいね、暁斗さんが写真撮りたいって」
「うん。よく考えたら響くんの写真って無くてさ。ほら、旅行中も撮らなかったし... 」
「千裕くんがカメラマンだったもんね。」
「そうそう。だから欲しかったんだ。」
俺も暁斗さんも普段から写真を撮ることはしない。
写るのがあまり好きじゃないし、見返すことも無かったから。
旅行中は俺たちと真逆の、写真大好き千裕くんがカメラマンをしてくれて、スマホやデジカメでたくさん撮ってくれたっけ。
今まで『思い出』なんて欲しいとか思うことは無かったけど、暁斗さんとの思い出なら欲しい... かもしれない。
「... ... 俺も、撮っていい?」
「俺を?... ... もちろん、どーぞ?」
スマホを構えると、画面越しに微笑む暁斗さんを何枚か撮った。
... うう、浴衣姿の暁斗さん、めちゃくちゃカッコいい... !!
それに浴衣姿ってだけで、旅館でのあのエッチを思い出してしまう。
「響くん?顔赤くない?」
「う、うそ!?」
「暖房効きすぎた?暑かったらごめんね」
「だ、大丈夫!!ぜんっぜん!」
ダメだダメだ、落ち着け響... 。
暁斗さんの記憶はあったけど、あれから特に意地悪されてないし、自分からわざわざ蒸し返すようなことするもんじゃない。
不思議そうに俺を見る暁斗さんに、あははと笑って誤魔化して、俺は私服に着替えようとリビングから出ようとした。
「どこいくの?」
「え?や、写真撮ったし着替えに... 」
「なんで?」
「なんでって... ?」
「まだ俺の心残り、あるんだけど?」
暁斗さんはゆっくり俺に近寄って、ドアノブを握る俺の背後に立つと、後ろから耳元にフゥッと息を吹き掛けた。
「... ... 響と浴衣エッチ、したいなぁ」
甘くて低い、暁斗さんのおねだりするときの声。
ジーンと響くその声は俺をメロメロにするってこと、知っててやってるんだろう。
身体に力が入らなくなって、その場にガクンと膝をつくと、暁斗さんは俺を優しく抱き上げた。
「あ、暁斗さん!?」
「俺の全部を知りたいって言ってたもんね」
「言ったけど!!... ま、まさか!?」
「俺さぁ... 響の泣き顔も好きなんだよねぇ... 」
そう言ってベッドの上に俺を降ろした暁斗さんは、旅館で見たのと同じ顔で微笑んだ。
「今日も、苛めてあげるね?」
ーーー俺が暁斗さんと付き合ってから知ったこと、それは想像以上に嫉妬深くて意地悪だってこと。
『響』って呼ぶときは意地悪スイッチが入っていることもようやく気が付いた。
この日もたっぷり苛められて半泣きだったけど、そのあとは蕩けるほどに愛してくれて...
ドSな暁斗さんは、どこかゲームの中の誠さんによく似ていて、ちょっとだけそのギャップにハマりそうになったのは絶対絶対内緒の話。
おまけおわり☆ミ
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