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事件は突然起きた。 「ごめん、明日から送り迎え出来なくなる... 」 ベッドの上でイチャイチャした後のまったりタイム中だった。 プレゼントしたジッポで煙草に火を着けた暁斗さんは、申し訳なさそうに俺に言った。 「実は新しく俺の担当してる部署に入る子の教育に入らなきゃいけなくて... 。朝もいつもより早いし、夜も何時に帰れるか分からなくて... 」 暁斗さんはダッチーと同じ出版社で働く仕事の出来る人だ。 多分役職もあるんだろうけど、その辺りは誤魔化されていつも教えてくれない。だけどダッチーから聞いていたし、俺としてるクリファンの仕事以外にもたくさんの仕事を抱えていることは知っていた。 「ん、分かった!あんまり無理しないでね?」 「ありがとう。なるべく時間作るからね。いつも通りここに来てもいいから。」 「ありがと!」 ... そして俺のために仕事を切り上げて、自宅で仕事をすることが増えていることも知っていた。 暁斗さんの邪魔になってないか、たまに不安になって聞いてみると、『会社より響くんの側の方がはかどるから』って言ってくれたからそれ以上は聞かなかったけど、やっぱり忙しいんだ。 でも暁斗さんと過ごす時間は短くなるかもしれないけど、全く会えないわけじゃないんだし... と、俺は深く考えずに頷き、そのまま暁斗さんの腕の中で眠った。 ーー翌日、『朝が早い』と言った暁斗さんは言葉通り6時前に部屋を出ていった。 お見送りがしたくて、俺は起きていってらっしゃいのキスをして二度寝したんだけど、起こしてくれる暁斗さんが居ないから危うく寝過ごし遅刻ギリギリで出社。 朝ごはんを食べる時間もコーヒーを飲む時間もない、それに車じゃないから通勤時間もいつもよりかかる。 今まで暁斗さんのマンションに泊まる日は、決まって暁斗さんに起こしてもらって朝ごはんを作ってもらい、美味しいコーヒーを飲んでから車で送ってもらう... なんて甘えた生活してたせいだ、自立しなきゃマズイ、と反省しながらデスクに着く。 一応俺にも仕事は割とあって、今までほぼほぼ定時で上がれていたのは『やれば出来る子』だから。... 自分で言うのもなんだけど。 今はクリファンの企画に全力を注ぎ込んでいるから他の仕事は回ってこないけど、暁斗さんはきっとあれこれ重要な仕事をこなしてるに違いない。 なら俺だって、仕事に打ち込めばいいだけの話だ。 「しゅにーーーん!仕事無いですか!?」 会えない時間を仕事で紛らすわけじゃない、ただ俺も頑張ろうって思っただけ。 何も知らない主任は何事だと騒いでたけど、今の俺はやる気満々だ。 ... ... でも、これが暁斗さんと俺の間に亀裂を生むことになるなんて、その時は気付きもしなかった。

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