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翌朝、俺は久しぶりに暁斗さんに起こしてもらって暁斗さんお手製の朝ごはんを食べて、コーヒーまで飲んでゆったり出勤した。 やっぱり暁斗さんがいなきゃダメで、頼りきってる自分がいることを再確認した。 それでも『ダメな自分』だと思わなかったのは、暁斗さんが『甘やかしたい』って言ってくれたからだろう。 いってきますのキスを何度もしてからマンションを出るのはすごく寂しくて、もう休みたいって思ったんだ。 (あーあ、同棲できたらなぁ... ... 千裕くんと主任が羨ましい... ... ) 二人は同じ職場で同棲している同性カップル。 俺もほとんど自宅に帰ってないから、もう同棲してるようなものだけど... やっぱり羨ましくなってしまう。 「おはようございます」 「おはよー!響くんっ!」 会社に着くと、多分主任と一緒に出勤してる千裕くんが既に書類を抱えていた。 四六時中一緒にいる二人は喧嘩も多いけど仕事の話も共有できて、千裕くんはもうずっとここで働いている社員並に仕事が出来るようになっていた。 「あ、響くん!これ追加って」 「ん、了解。えーっと... ああ、これか... 」 「至急って言ってたけど、大丈夫?」 「うん。今日も暁斗さん遅いっていってたし、残業すれば間に合うよ。」 「そっかぁ、暁斗さんまだ忙しいんだね。じゃあ、お願いします!」 至急、と赤字で書かれた書類を受け取りデスクに戻り、早速俺はその書類をチェックした。 主任に仕事をくれ、と言ってから、こうして一日で終わるような仕事を回してもらい残業している俺は、今までより要領がよくなったと思う。 一日の中でどう時間配分してこなすか、それを考えるようになったからだ。 今までは長期間かかる仕事ばかりだったからそこまで考えずにゆっくりしていたけど、至急の仕事はそうはいかない。 おまけにクリファンの企画と同時進行だから頭を使わなきゃ間に合わない。 ... そう考えたら、俺も少しはスキルアップしてるのかな。 「よし、頑張ろ... っ」 出世したいとかそんな願望はどこにもないけど、せっかく働いてるんだ。 もっともっと出来る人間になりたい。 ... 最近の俺はやる気で溢れていた。 ✳✳✳✳✳ 「え?俺が、ですか... ?」 「そうそう。お前最近頑張ってるし、いろんなこと経験するのもいいだろ?」 「... ... 確かに... 」 お昼休みの喫煙所、もくもくと上がる煙に眉をひそめながら俺は主任と千裕くんの三人でコーヒータイム。 そのとき主任に『他部署への応援』を進められた。 もちろんクリファンの企画はそのまま担当し、一日数時間だけ会社内の他の部署の応援に行くのはどうかっていう話だった。 入社以来、デザインのことしか携わって来なかった俺からしたら、他の部署の仕事は未知の世界。ぶっちゃけこの会社の中にいくつの部署が何処の階にあって何をしているのか、全部を把握出来ていないのだ。 何故なら、大まかに『デザイン』という部署がある中に更に細かく数字とアルファベットで仕事をする部屋が分けられていて、会議室を含めるとその一つの大まかに区切られた部署だけでワンフロアを使う程その数が多いからなのだ。 ちなみに俺は『D-5』という名前がついていて、デザイン部はD-1からD-12まで部屋が分けられている。 主任は一応その全てをまとめることになっているんだけど、俺が入社したときからずっとD-5にデスクを置いている。 普段から仕事をしてる気配があまりない主任だけど、結構ちゃんとした役職に就いてはいるってことなんだよな。 そんな主任からの提案は、俺を『営業』の応援に行かせるってことだった。 ゲームの営業って、スマホアプリなのにどうやって売り込むのだろう、と不思議に思っていたし、興味はある。 「どうする?やってみるか?」 「...はい!」 何事も挑戦だ。 こうして俺は翌日から営業の応援をしながら自分の企画も進行することになった。

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