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Side AKITO ② 週休二日制、それがいつからこうも働き詰めの日々に変わってしまったのだろうか。 仕事に追われている中で、松原晶が休みのタイミングで俺も休みを取ることにした。 と言っても片付けたい仕事は山程あって、結局持ち帰りになるのだけれど...。 久しぶりに日付の変わる前に帰宅し、響くんの帰りを待っている時間...それは楽しみで胸が弾むような時間だった。 しばらく書類に目を通していると、バタバタと足音が聞こえ、カチャリと鍵の開く音がした。 「暁斗さんっ!!!!!」 走ってここまで来たのだろう、息を切らしながら俺の顔を見る、久しぶりの響くんがそこにいた。 やっと会えた響くんは少し痩せたような気がして、弥生のメッセージを思い出す。 俺と同じように仕事に追われていたのか、それとも自発的にそうしたのか... どちらにせよ、会えた喜びよりも響くんの体調が心配になってしまう。 だけど近付いてきた響くんから香る匂いが、俺の思いに蓋をする。 『久しぶりに会った』というだけなのに、もう響くんを抱きたいと思ってしまう。 早くその唇に触れて、全身を愛撫して、甘い声を聞きたい。 会えなかった分、目一杯優しく抱きたい。 ...それなのに、この日の響くんはやけに積極的だった。 珍しく自分から口付けて来て、俺の意地悪も受け入れて、いつもなら口の中で逃げ回る舌が俺の舌に絡まってくる。 予想外の行動は嬉しいけれど、俺の中の欲望を一気に沸き立たせてしまった。 ほんの数分前まで優しくしよう、そう思っていたはずなのに、あっという間に苛めたいと思ってしまう。 俺に抱きついて必死に舌を動かす可愛くて仕方ない響くんは、まるで小悪魔のようだ。 そして俺は自分の欲望に勝てず、この日響くんに自身をしゃぶってもらう、なんてお願いをし、過去最高に可愛く乱れる響くんを堪能したのだった。 ***** 「京極さぁぁあん!!」 あの幸せな夜から数日、また響くんに会えない生活が始まった。 代わりに毎日顔を合わせるのは、出会った初日からなんら進歩しない、いつまでも新人の松原晶。 資料室から持ってきたファイルを片手に俺の名前を叫びながら走る姿を見て、このあとどうなるのか予想がついてしまう。 「っわわ!ひゃぁあ!!!」 何も無いごく普通の廊下、そこで見事に滑って尻餅をつく。...予想通りだった。 涙目の松原晶を助ける気になんてなれず、尻餅をついた時に手から落ちたファイルを拾い上げてため息を一つ吐いた。 「あのさぁ、君はどうしてそうドジなわけ?」 「す、すいません...」 「ってかこれ頼んだファイルじゃないし。もう一回、やり直し。」 「...はぁい」 ファイル一つまともに持ってこれない、こんな奴と研修旅行になんて行ったところで何も変わらないだろう。時間と経費の無駄だ。 しょぼんと背中を丸めて資料室に戻る松原晶を見ながら、そんなことを考えた。 本当に行きたくなくて仕方ない研修旅行、それには松原晶がバカでドジで救いようの無い新人だったことともう一つ理由があった。 今回は俺と松原晶の二人きり、名前の通り『旅行』なのだ。 親睦を深めることを含めているから、行き先は観光地でちゃんとしたホテルに泊まれる。 研修はそのホテルの一室...大抵は会議室のような部屋で行われることが多く、それが終われば自由時間、つまり旅行気分で観光を楽しめる。 過去に指導者として参加したときは、俺以外にも何人か指導者が居たし、対象の新人も多かったからまずまず楽しめたけれど、今回は二人きり、俺にとって都合が悪いことこの上ないのだ。 ...二人きりで何故都合が悪いか、それは相手が松原晶だからということなのだけれど... 「京極さんっ!今度こそ、これですよね!?」 「...違う。」 「えぇ!?なんでぇ!?私、ちゃんとチェックしたのにぃー!!!」 そう、松原晶は『女』なのだ。 ショートカットの茶色い髪はいつもシャンプーの香りなのか花の匂いがし、響くんより低い背丈は女の子の中でも低い方。 今時の女の子の流行りなんて知らないけれど、ふわふわした洋服に身を包み、バカ丸出しの顔にはくりっとした大きな瞳と長い睫毛に小さい口。 そんな松原晶を一切『可愛い』なんて思うことはなかったけれど、他の男性社員は皆口を揃えて『社内一可愛い新人』だと言う。 俺が言いたいことはつまり、普通の男性が可愛いと思うこのバカ新人(女)と二人きりで二泊三日の研修旅行に行かなくてはならないことが嫌で嫌で仕方ない、ということ。 そして何故かタイミングを逃して、響くんにこの新人が『女』であることを伝えられずにいたのだった。

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