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中華料理3
店に着くまでの車中、佐和は生きた心地がしなかった。
ガチガチに緊張した佐和の様子を、竜蛇は面白そうに見ている。鉄平は呑気に話しかけてくるが、佐和は上の空だった。
中華料理屋に到着する頃には、佐和は三年くらい寿命が縮んだような気がしていた。
店に着いた四人は広い個室に通された。
「わぁ」
鉄平は珍しそうにキョロキョロと部屋を見回す。
鉄平の知っている中華料理屋と言えば、近所の老夫婦のやっている小さな店くらいだ。
今夜、竜蛇が連れてきたのは高級中華料理店だった。
鉄平は嬉しそうにニコニコしているが、佐和の方は場違いな雰囲気に更に緊張した。
そんな佐和をちらりと見て、須藤はちょっと気の毒に思った。
鉄平は別として、竜蛇と須藤はピシリとしたスーツを着ている。佐和は着古した革ジャンにデニムという出で立ちで、居心地悪そうに突っ立っていた。
そんな佐和の心露知らず、竜蛇は座るように勧めた。
「タマちゃん、座って。佐和も」
「へい!」
円卓に、竜蛇、須藤、佐和、鉄平の順に座った。
「俺、こんなお店初めてで。映画みたいですね」
鉄平の無邪気な言葉に竜蛇は笑みを深めた。
「オーナーとは知人だし、個室だからね。リラックスして、佐和も」
「ぅへい!」
竜蛇に名を呼ばれた佐和が、またしてもおかしな返事をした。
「佐和さん、今日面白いね」
鉄平が呑気に笑った。
───人の気も知らないで! なんで鉄平くんは組長と普通に喋れるんだ!?
佐和は少しだけ鉄平を恨みがましく、そして羨ましく思った。
「そりゃ急に組長にこんな店に連れてこられたらビビりますよ。なんせ、うちのラスボスなんですから」
「お前はそのラスボスにしょっちゅう説教するじゃないか。須藤」
「貴方が勝手な行動ばかりするからでしょうが。佐和、遠慮せず食ってけよ」
「は、はい」
佐和は竜蛇とまともに話したことなど無かったが、須藤や鉄平と気さくに話す雰囲気に少し驚いていた。
「先に注文しておこうか。タマちゃん。何が好き?」
「ニラ卵です」
「……うん。俺のオススメを適当に頼んでもいい?」
「あっ。はい」
───あれ? 組長、ニラ嫌いなのかな?
佐和はちらりと竜蛇の横顔を盗み見たが、真意は読めなかった。
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