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第9話

「なら、抱えて帰ってやろうか?」 「え?は?」 「家まで、そんな遠くないだろ」 腕を麻痺させてしまった罪悪感もあるのでそんな提案をする。 「いや、いいって暑いし」 「文句言うなよ、ろくに歩けねーくせに」 「うるせー、もう帰れよ」 「この後お前が転んで車にひかれて死んだりしたら寝覚めが悪いだろ」 さっきの事もあり、目を離すのは危険な気がするヨシ。 「んなことになるかよ」 「いやなるな、そんな顔面蒼白で何言っても説得力ねぇわ」 「っ、うるせ、」 「いいから観念しろ、抱えるからな!いいか!力抜けよ!」 強引に再び、アキラを抱き上げる。 アキラの両太腿を下からヨシが左腕で持ち上げて、右手で背中を支えてやる。 「ちょ、無茶苦茶だなお前!」 「お前の方が無茶苦茶だっつーの!歩けねーなら素直に頼れよ!」 ヨシはアキラを抱えたまま歩きだす。 「っ…、恥ずかしいし、借り作るのがヤなんだよ」 「体調悪い時に借りもクソもねぇだろーが」 「……それでもヤなんだよ、」 「ほんっとひねくれやろーだな」 「うるせー」 「そんな、ヒネてねーで周り見てみろよ見たことない高さの景色だろ、二度と見れないかもしれない景色、堪能しとけよ」 ヨシが縦に抱き上げているため、アキラは頭2つ分くらいは高い位置にいる。 確かに見晴らしはいいが… 「……バカ。つか、マジ目立つし降ろせよ」 「人の好意には甘えとけ!」 「本当歩けるから、ヨシ!」 手でヨシの背を軽く叩きながら降ろしてもらおうと必死になる。 「ったく、うるせーな、これ以上騒いだらお姫様抱っこするぞ!」 「っ、」 ヨシにお姫様抱っこ状態で街中歩かれる…? 絶対嫌だー!! 脳内で想像してピシッと固まるアキラ。 「あ、大人しくなった」 「……もう、早く行けよ」 強引なヨシに抵抗は無駄だと諦めて、身体を預けながら溜息をつく。

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