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第3話
やってきたのは師匠の家の裏庭にあるトレーニング場。
此処には自分の現在レベルに合ったレベルのモンスターが出てくる。
呪いの森だからゴースト系のモンスターだ。
さわさわと木が揺れ、俺のローブも靡く。
俺の現在レベルは55、だからゴーストのレベルは50となっている。
こりゃあ、居眠りしていつの間にか終わってた舐めプ戦闘は出来なさそうだ。
「行くぞミュミュ!」
ミュミュはやる気満々で包丁をキラリと輝かせてゴーストに襲いかかる。
ゴーストは消えるのが厄介だが、動きが遅い…ミュミュ相手だと苦戦するだろうな。
消える前に背後を取り頭に被ってる布を切り刻む。
ゴーストの本体は布で、勝つと魂が浄化され天にのぼる。
俺もローブの下から本を取り出す。
これが俺の武器。
本に書かれた文字に触れ弾き出すように手を前に出すと空中に魔法陣が現れて詠唱すると発動する。
パラパラと本を捲り指でなぞる。
「死せる死神よ、我が前に集え…我の名はグリモワール使いツカサ!」
厨二病みたいで恥ずかしいが、無事発動して黒い炎でゴースト達を焼き払った。
この力は人の魂にしか反応しないから周りの木などには被害がない。
…夢だから気にしなくていいと思うが、何となく…な。
ミュミュがこちらに近付いてくるから手を上げてハイタッチをしようとする。
…あれ?なんか猛スピードで来るんだけど、どうかした?
ミュミュを呼ぼうと口を開くと背後でぐちゃっとなにかが潰れる音がした。
恐る恐る振り返り、顔を青ざめた。
俺の背後にまだ一体ゴーストが残っていたみたいで気付かなかった。
そしてそのゴーストを仕留めたのは、ドス黒い家を掴めるほどの巨大な手だった。
ゴーストがジタバタ暴れて逃れようとするが、手が包み込むように握り潰した。
天にのぼる魂をボーッと見ながらミュミュが到着した。
…そっか、ミュミュはゴーストと手を知らせようと駆け付けてきたのか。
しかし、こんな手の呪文なんてあったか?使い魔にもいないはず…新しいモンスター?
それに、ビリビリ肌が痛いのを感じるほど…強い…これ、死亡フラグじゃないか?
ゲームだと死ぬと自宅のベッドに戻る、これもゲームだし…平気、だよな?
足が動かないのは怖くてだと思っていたが、足元を見ると手から伸びる影が足に絡まり動きを止めていた。
「た、助けっ…誰か」
こんな時に限って誰もトレーニング場にいない。
涙目の俺はただ手が迫ってきているのを見るしかなかった。
死んでも家に帰るだけだと知っていても、怖い。
やがて闇に包まれてしまった。
…あ、意外と暖かい。
寝心地が良くてすやすやと夢の中に旅立った。
きっと起きたら現実だろうから、早くレイチェルちゃんに会いに行かなきゃ…
影……なんか忘れてるような、まぁいいか。
ーーー
ふかふかのベッドの上で寝返りを打つ。
いいニオイが鼻を通り安らかな眠りを誘う。
…何だろう、足がくすぐったい。
犬に舐められてるみたい。
もぞもぞ足を動かす。
「コラコラ、たろー…ダメだろ…むにゃむにゃ」
愛犬のタロウがまた部屋に入ったのかと思い、寝ぼけながら緩く叱る。
大型犬だが、甘えん坊のタロウは家族の中で俺に一番なついていた。
子供の頃から一緒にいる可愛いやつだ。
本人も言ってる事がイマイチ分かっていない。
頭が覚醒せず口をもごもごさせる。
二度寝しようかと思ってたら舐めるのを止めて枕元がギシッと軋んだ。
「……たろうって誰だ」
低くドスがきいた声がして無意識に寒気で震えた。
あれ?タロウ喋れるんだっけ?
いやいやそんなバカな、タロウが人語を話すなんて初耳だぞ。
それによくある犬の鳴き声が空耳に聞こえるレベルではなかった。
まだ寝ぼけた目をゆっくりと開ける。
そして一気に覚醒した。
「俺がいながら…誰だその男は…俺のもんに手を出した事を後悔させてやる」
「いやぁぁぁっっ!!!!!」
目の前に物凄い怖い顔で怒る超イケメンがいて、とりあえず枕を投げつけた。
顔面ヒットして少し気が緩んだところで慌ててベッドから出て部屋の隅に逃げる。
…あれ?この部屋、俺の部屋じゃない?
俺の部屋はちょっと散らかっていてゲーム機や漫画本なんかが床に適当に置いている。
それに比べこの部屋は綺麗に片付いている…あまり生活感がなさそうな部屋だが…
それに俺はつい最近見た事があるような…
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