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第17話

ゼロの影が親指を立てていたのを見て腹が立ったからわざと日陰を歩いた。 城を出て、大きな噴水がある広場までやって来た。 本来は本がないと魔法が使えないグリモワール。 しかし、流石子供の頃にマスターしただけはあるゼロだ。 俺がゼロに借りた服は特殊な素材で出来ていて、不思議と魔力が溢れてるみたいにポカポカする。 試しに魔法陣を思い浮かべると、地面が発光して魔法陣が浮き上がる。 「…やっぱ凄いんだな、アイツ」 同じグリモワールとして少しライバルのように意識していた…敵うわけないけど… ゼロはたまにアホみたいだが、頭はいい天才だと見せつけられたようで悔しかった…変態だけど… 俺はいつかゼロを超えるグリモワールになると決意した、夢は不可能なほど大きく持った方がいいだろう。 早速魔法陣に乗り森に帰る。 俺がいなくなり、師匠はきっと心配しているだろうから安心させたい。 それが弟子心というものだ! 結果から言うと、師匠は俺がサボって遊びに出かけたと思いカンカンに怒っていた。 必死にブライドに誘拐されたと訴えるが全然聞いてくれない。 理由は師匠はずっとブライドと居て、一緒に師匠の家に入った時には俺はいなかったから。 俺だってよく分かんないけど、ブライドしかいないから…俺を誘拐したの。 猫になった事を説明しようとすると木の杖で叩かれ「もう言い訳は聞かん!」とカミナリを落とされビリビリ痺れた。 うぅ…俺、悪くないと思うんだけど… ※ゼロ視点 俺はいつもツカサを見て、猫みたいだと思っていた。 気ままに動き触ると威嚇する可愛い猫。 だからか、黒猫を見た時すぐにツカサだと気付いたがまさか本物の猫になってるなんて気付かなかった。 なんで白の騎士団のフロアにいたのか…そういえばブライドが猫好きだと何処かで聞いた事があった。 今まで興味なかったから忘れてた。 じゃああの首輪…真相を知るなら本人がいいだろうと思いさっきまでいたツカサの温もりがある毛布を抱きしめる手を離す。 先ほど闘技大会の打ち合わせをしたばかりで見たくもない顔を見せられて不快な気分だったが、ツカサが関わっているなら聞く必要がある。 一人で白の騎士団のフロアに行くと騎士達が何かを探している。 探し物に夢中で俺の存在に気付いてないようだ。 興味ないからまっすぐブライドの部屋に向かう途中で廊下の窓を眺めてため息を吐く奴がいた。 …なにしてるんだ此処の奴らは… 「おい」 「…ん?なんだ君か」 ため息を吐きたいのはこっちだというのに… こちらをチラッと見たかと思ったら悲しげにまた窓を向いたブライド。 コイツに一秒も使いたくない、さっさと終わらせるか。 ツカサは猫になってたからツカサは知らないだろう。 執着されないためにも、さりげなく…仕留める。 目を細めて静かにブライドを睨む。 「青いリボンの黒猫はお前が拾ったのか?」 「クロを知ってるのか!?」 ツカサの話をすると思ったより食い付きがよく、勢いよくこちらを向いた。 …クロって、勝手に俺のツカサを名付けやがって…イラッとしながらも顔には出さない。 やはりコイツがツカサに首輪を…闘技大会の時覚悟しとけよ。 俺の肩を掴むブライドの手を叩き、足蹴りした。 何処かで悲鳴が聞こえたが知らん。 「くっ…お前は、傷心中の人間を労わる気にはならんのか」 「ならねぇよ、バカか」 呆れた顔をしてブライドに切った猫の首輪を投げつけて返す。 捨てても良かったが、ふとなんでコイツのゴミを俺が捨てなきゃいけないんだ…自分で捨てろと思いついでに返しにきた。 そのままツカサへの想いも捨てろという意味も込めて… ツカサが可愛くて独占したくなる気持ちは痛いほど分かる。 でも最初から俺のもんだ、他人が入る隙なんてない。 ブライドは首輪を拾い俺を睨んだ。 「クロに何した!」 「は?クロじゃねーし、お前に飼われるのが嫌だって言うから首輪を外して山に返しただけだ」 そう言えばもう探すのは不可能に近いだろう、この世界は広いしな。 わなわなと震えるブライドをほっとき白の騎士団のフロアを後にした。

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