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ご
襟元から入った手が首筋を撫で、耳の裏をくすぐっていく。性急に裾を割って衣装を乱し、口を塞がれ、舌を吸われ、唾液がぐちゅぐちゅと淫猥な水音を立てた。
鼻にかかった声が漏れ、引き倒される。透明な糸がぷつりと途切れた。
腰の上に跨り、自ら衣装を脱いでいく。恥ずかしそうな表情がたまらない。いたずらに、ふとももを撫ぜれば大げさに体を震わせ、顔を赤くする。愛らしい以外の言葉が見つからなかった。
「僕のも脱がして?」
かぁ、と赤い顔がさらに赤くなる。金魚みたいに口をパクパクさせて、数俊、息を呑んで帯を解き出す。見事な手際であっという間に帯を解かれ、これでどうだ、とドヤ顔を披露した志荻の華奢な手のひらを熱く滾る股間へと誘導した。
こっちは触ってくれないの? と囁けば、石像のごとく固まってしまった。いじめすぎたかな、喉を転がして笑い、襦袢の肩から落とす。露わになった真っ白い肌。新雪を踏み荒らすように、赤い痕をつけた。
右手を下着の中にもぐりこませ、半ば起ち上がったそれを握る。
「ひ、え、あっ、」
数回上下に扱けば、とろん、と目を潤ませ、くったりと頭をトーヤの胸に預けた。内側の頬を噛んで、声を抑える志荻が気に食わなくて、空いている手で口内を荒らす。節くれだった指が歯を割って口内に侵入し、溢れた唾液をじゅくじゅくと混ぜ合わせた。
完全に起ち上がり、硬く芯を持った竿が脈打つ。指を引き抜いて、口を合わせて唾液を吸い上げるのと同時に傘の先端を指先で抉ってやれば、目を見開き足先を震わせてイッてしまった。べっとりと濃い白濁液がついた手の平を見せ付けるように舐めれば潤ませた眼で睨みつけてきた。
眉を下げ、快感の余韻に浸る志荻は本当にわかっているのか、ふわふわした声で「いいよ」と言った。じり、と爆発しそうな熱を焦がし、暴走しそうな気持ちをぐっと抑える。
本当にいいのか、再度、静かな声で紡いだトーヤに、花開いた微笑で頷いた。
「トーヤ君なら、いいよ」
袖口から取り出した小瓶に、とぶん、と液体が入っている。薄い桃色で甘い香りだ。液体を手の平で温めて、双丘の間へ垂らした。独特な感触に眉が寄る。不安でトーヤを見やればキスをされる。キスは好きだ。なんだか頭がふわふわして、心地よい。
深爪ぎみに切りそろえられた指先が、ぐにぐにと固く閉ざされた菊をほぐすように動き、つぶ、と一関節分、中へ入り込んだ。強い異物感に眉を寄せる。右手で後孔を弄り、左手は陰茎を扱いて、気を紛らわせるように全身に口付けをされる。素直な快感と異物感がごちゃ混ぜになって、ちゅ、ちゅ、と音がするたびに涙が零れそうになった。
ぽかんと開いた口を閉じることができず、「あっあっ」と意味の無い言葉を発する。汗が滲んで、快感に細い両腕は自然とトーヤの首に巻きついた。ぴったりと体が密着して、お互いが口を合わせて獣のように口付けを交わす。
「っ――や、トーヤくんっ、すき、すきっ」
「志荻……!」
ずちゅ、と指が二本、挿入を繰り返す。異物感にもだいぶ慣れ、ナカでぶくりと膨らんだところを押されると下腹部に熱が溜まった。じわじわと熱が昂り――ぐちゅ、と指が引き抜かれる。
「も、いれていいかな」
熱に浮かされた、焦れた言葉だった。気持ちよくなりたくて、涙を零しながら頷いた。
「は、はやく、いれて」
下腹部の熱をどうにかしたくて、固く熱くなったトーヤのそれに腰を押し付ける。みっともない、こんなの淫乱じゃないか、どこか冷静な頭が囁くが理性は完全に溶けきっていた。
小さく舌を打ち、再び激しい口付けを交わす。ぴたり、と菊孔に押し当てられた熱が、ゆっくりと押し入った。内臓を掻き分けながら入ってくる圧迫感に息が溢れた。傷をつけないように、無理をさせないように、なじませるようにゆっくり挿入される。それがかえって焦らされているようで辛かった。
ずっぽりと、奥までくわえ込み、かすかな振動でさえも内臓が震え、ぷくりと膨らんだところを押しつぶされると首いようのない快感に全身が痺れた。
「あ、や、これヤば」
「 痛くない?」
「う、う、うぅぅ っ、」
「大丈夫そうだし、僕も辛いから動くよ」
「えっ、や、待って、まってだめ、……ッんっ、ぐ、んあ、あっあっアッ」
細い腰を掴み、キツイ体内を上下に動かす。しっかりとほぐれた菊孔はぐちゅぐちゅと白く泡立ちながら太い竿を咥え込む。
前立腺を抉るように律動を繰り返せば、ひっきりなしに喘ぎ声が溢れ、処女穴だったとは思えないほどにとろけきっていた。
「はっ、 きもちい?」こくこく、と必死に首を縦に振る志荻は普段のつんと澄まし顔をとろけさせ、「すき、すき」と拙い呂律で繰り返す。胸に湧き上がるのは多幸感,永遠と、この時間が続けばいいのに。
肌の打ち付けあう音と、獣の息遣い。徐々に腰の動きが早くなって、すぐにでも気をやってしまいそうだ。顎が上を向き、唾液が溢れ、竿の先からぽたぽたと白濁が散って、上り詰めそうだったところをきゅっと、根元をせき止められた。快感がぐるぐる逆流して、目の前でチカチカと火花が散った。
ガツンッ、と最奥を突き上げられて、息が止まる。トーヤが手を離せば、とぶとぶとゆっくり精液が溢れた。
「 ッ……は、は、ぁー……」
脱力したトーヤは、胸の中にきつく志荻を抱き寄せて、息を吐き出す。ゆるゆると腰を動かせばじわり、と奥が熱く滲んだ。腹の中で柔くなったそれを抜けば、白濁がこぶこぷと零れてまたそれが劣情を煽る。
志荻の首筋に鼻を押し付け、深く息を吸い込んだ。
どれくらい、そうしていただろう。汗ばんだ身体を密着させて、息を整えて、今この時間を大切にする。離れがたい時間だった。
ぼんやりと視線を漂わせる志荻かもしれないし、息を整えたトーヤかもしれない。床の上だったから、節々が痛んだ。乱れた着物の上に横たわり、足を絡めて抱き合った。熱に浮かされた頭が、こんな都合の良い夢を見ていいのかと問いかける。
静かに整った呼吸に、目を合わせて軽く口付けを交わす。
「志荻、好きだ」
「 おれも、トーヤ君が好き」
目を閉じて、お互いの熱を感じながら夢にまどろんだ。
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