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新卒採用され引っ越してきた今年の春から、慎司は千暁のストーカーだ。
川沿いの道を走ると現れる。
最初は無視をしたり、警察を呼ぶと脅したりしたが、慣れとは怖い物で今では雑談をする仲になった。
夜、いつも通り走っていたら新調した靴が合わず足が痛み出した。
川沿いの道で休んでいたら見慣れた車が近くに停車し、慎司が降りてきた。
長身で股下が長く、日本人離れしたシルエットをしていた。
「千暁くんどうしたんだ、そんなところでしゃがみ込んで」
「足を痛めたみたいで……大丈夫です。歩いて帰ります」
「君の家、まだまだ先じゃないか。俺が送っていくよ」
なぜ千暁の自宅を知っているのか疑問に感じたが“ストーカーだからか”と無理矢理納得した。
それに、いつも飄々とした慎司が、眉尻を下げて心配そうな顔をするので怒る気にもなれなかった。
「ほら、汗で体が冷えるよ」
慎司は屈んで、千暁の頬や顎を伝う汗を手の甲で拭う。
あまりにもスマートな動きで振り払う隙が無い。
「だ、大丈夫ですから」
「そうはいかないよ。この辺は不審者が多いからね」
「それ、アンタのことじゃないですか!?」
「んー……どうだろうねぇ……よっと」
「わぁ!?」
慎司は千秋を横抱きにして軽々と運び、助手席に放り込んだ。
「さ、シートベルトを締めて」
慎司は当たり前のように出発しようとする。
「降ります!歩いて帰れますから!」
「そんなに帰りたくないの?じゃあ、ホテルにでも、行く?」
「なに馬鹿言ってるんですか!?違うんです、車が怖いんです!」
「……え?何で?」
「昔、嫌な出来事があって……」
「……ふーん。じゃあしょうがないね」
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