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「おい!そのアンニュイな顔をやめろ!目に毒だ!」
物思いに耽っていた千暁に蜷川が声を荒らげる。
仕事中だったことを思い出して身を正す。
「ったくよぉ。そだ、社内報が出来たからお前も見とけ」
寄越されたそれをパラパラと捲っていくと、見慣れた顔がそこにあった。
「蜷川さん、この人……!」
「ああ、ウチの社長だよ。えらい男前だよなぁ?」
「この人、どんな人ですか!?」
「えー?そうさなぁ、いつも仕事に没頭している働き者の真面目な人だよ」
「そうじゃなくて!蜷川さん、付き合い長いんでしょう? 昔の事とか教えて下さいよ!」
「な、なんだよお前、怖ぇよ……」
蜷川から社長の事を根掘り葉掘り聞き出し、
人事部で住所録を奪い、
定時になると会社を飛び出した。
世田谷のタワーマンションの前で待ち、日が落ちた頃、目当ての人が現れた。
「やあ千暁くんお疲れ。君もストーカーになったの?」
「……お疲れ様です。萩原慎司社長」
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