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エレベーターは最上階へと上がっていく。 会話は無く、千暁は今までの慎司の言動を思い出していた。 死に急いでいるような乱暴な運転 「千暁くんが殺してくれるなら死んでもいい」という戯言。 フロントが凹んだBMWと結婚指輪 水族館に居たジュゴンの親子を見る、慎司の暗い目 楽しそうな家族を見る、辛そうな顔 点と点が繋がっていく。 ――アンタの方が、僕よりずっと死にたがってるじゃないか エレベーターが止まり部屋に通される。 部屋の至る所に写真が置かれ、いつか車内で見た女性が写っていた。 思い出の中の母とは少しも似ていなかった。 「折角来て貰って悪いけれど、こんな部屋じゃ落ち着かないだろう?」 「萩原社長……」 「ホテルにでも行こうか?ディナーが美味しいところが……」 「慎司さん」 「……」 「慎司さんが殺してしまったのは、家族ですね?」

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