「うあっ、あああ──っ!!」 　内臓をえぐるほどの衝撃に身も世もなく碧都は泣き叫ぶ。 　雄々しくも逞しい伊吹の怒張に最奥を貫かれ、自身の昂りを刺激されることなく碧都は精を吐き出した。それは二度三度と溢れるや氾濫し、勢いよく風呂場のドアに叩きかけられた。 　ドアはフロストガラスが張られていて、うっすらとだが海乃の陰影が確認できる。当然ながら碧都たちの様子も然り、彼女は腰を抜かしながらも碧都の局部であろう影に釘づけだった。 　未だ力を失わない碧都の昂りはへそを衝くほどで、吐き出された精は鈴口より白い糸をひきガラスに垂れている。 「っ──」 　ドアに手をつき肩で息をしながら、頽れないよう碧都は下肢に力を入れ意識を保つ。そうでなければ今にも意識を手放してしまいそうだからだ。 　不覚にも臀部からの行為で達するなど少なからず男としてプライドが傷ついた。男たるものとまでは言わないが、それでも何か大切なものを失ったかのような虚無感は否めない。 　これではまるで女ではないか。後ろからの快楽を貪った挙句の吐精などと、碧都の心情は深い焦燥と狼狽で修羅場と化していた。 「んふふ。どう、気持ちよかったかな？　僕のコレ。気に入ってくれると嬉しいな」 　そう耳許でささやきながら、碧都のなかにつき立てる自身の屹立を動かして揶揄する伊吹。 「──ふ、ふざけるなっ。つか調子に乗ってんじゃねえ、動かしてねーでさっさと抜けよっ」 「ひくひくさせてんな、くそっ」 　──伊吹が与えてくる刺激に翻弄されながらも、最後の理性を失うことなく憎まれ口を叩く碧都だった。 　僕に犯されていても尚、毅然とした態度を失わないとはさすがだ。けどもうすぐだ、碧都が僕に陥落するのは近い。 　そう思うだけの勝算が伊吹にはあった。これまでに肌を重ねた女は数知れず、セックスで培った肉体と心理の操作はお手の物。 　しかもこれまで関係を持った女性との逢瀬は碧都を悦ばせるため、強いては今日という日に向け努力を重ねたといっても過言ではない。碧都を攻略するためには伊吹が優位に立たねばならなかったのだ。 「ダメだよ、まだ抜いてあげられない。だってこれからが本番なんだから。それに碧都のコレまだギンギンに硬いし、ぜんぜん満足できてないでしょう？　もっと僕で満たしてあげる。 これから僕なしじゃいられない身体に創りかえてあげる。碧都が僕に依存して離れると泣いちゃうくらい、うんと気持ちよくして愛して可愛がってあげるからね」