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第26話 文:春日すもも
「あっ……ひゃ! や、やだ! またイっちゃ……」
碧都はまた体を震わせ、伸ばした手が宙を掴もうとする。
伊吹はその碧都の手を取り、自分の頬に触れさせる。
「もう答えは決まってるくせに、強情だな。碧都は」
「ううっ……うっ…」
ただ碧都は首を横に振るばかりだ。
「ちょうだい、ってかわいくおねだりしてごらん。そしたら、碧都が欲しいもの、ちゃんとあげるよ」
碧都は目に涙を浮かべ、じっと伊吹を見つめている。
体はこんなに伊吹を欲しがっているのに、このまま素直に従ってしまうのは自分のプライドが許さない。
もう何度も、吐き出しておいて、何を今さら、と思う。
けれど、言葉で伊吹に求めるのだけは、嫌だ。そんなことをしたら、自分と伊吹の関係は変わってしまう。
このまま快楽に従い、何もかも伊吹に渡してしまうなんて、できない。
「……お願いだよ、碧都」
じっと碧都を見つめている伊吹の表情は、寂しさを浮かべていた。
「伊吹……?」
「身体だけじゃなくて、ちゃんと僕のことを求めてほしいんだよ」
伊吹は、意地悪でこんなことをしていると思っていた。
自分を屈服させたいだけのだと思っていた。
けれど伊吹は、碧都の言葉を求めているとしたら――
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