29 / 33

第29話  文:めろんぱん

 覆いかぶさってくる大きな伊吹の身体から伝わる、トクトクという小さな鼓動。少し早くて、伊吹の心境が伝わってくるようだった。  汗と精液塗れになって、顔は涙やら涎やらで頭のてっぺんから爪先までベタベタしている。中途半端に脱がされた服はベタベタの身体にまとわりついて動くに動けない。  それなのに、感じるのは心地良さだった。 「碧都…」  吐息混じりの切ない声に胸がキュンと切ないような擽ったいような悲鳴をあげた。そっと振り返ると、視線が合って、その瞳の中に自分の姿がある。  吸い寄せられるように、唇が重なった。  初めは軽く。しかしすぐに物足りなくなって、お互いの唾液を交換しあい舌を絡める深いものに。 「…ン、ふ…ッあ、伊吹…!」  じゅる、と音を立てながら舌を吸う伊吹の腰が、ゆるゆると動き始めた。繋がったままだったそこはすぐに熱を取り戻して、身体中が発火したように熱くなる。 「ん、碧都…ちゃんとイかせてあげるからね。」  そう言うと伊吹は先ほど見つけた良いところをゆるゆると刺激し始めて、同時に震える俺のものを優しく握った。  突然舞い戻ってきた快感に全身が震える。俺は我慢出来ずに伊吹にグッと尻を押し付けた。 「伊吹ぃ…」  情けない声に伊吹が何を思ったのかはわからない。けれどその瞬間、伊吹の目が確かに雄のそれに変わった。  ぞくりと背筋を這ったのは、期待と歓喜だった。 「…もう、ッ、可愛すぎ…!」 「あ、あーッ!やんっ!伊吹、あ、きもちい…!」 「優しくなんか、出来ないよ…!」  伊吹は俺の腰を掴んで乱暴に突き上げる。もうとっくに役に立たない脚はガクガクと揺さぶられるままだ。  勃ち上がった俺のものはだらだらとヨダレを垂らして伊吹の手を汚していく。それは俺が今このセックスに溺れていることを伊吹に知らせるには十分すぎるほどだった。 「も、あ、あんッ!イ…ッちゃうぅ…」  だって、さっきまでよりも何倍も気持ちいい。  伊吹の気持ちがわかったからか、自分の気持ちに気付いたからか、それとも両方かはわからないけど、とにかく今伊吹と一つになっていることに心も身体も歓びで溢れていて、全身の肌が敏感になって伊吹を感じ取ろうとしていた。 「ん、ね…一緒にイこ?」 「うん、ン、…あ、伊吹ぃ…!」  壊れたレコードみたいに伊吹の名前と意味を持たない喘ぎを繰り返し、伊吹にグイグイ押し付けながら伊吹が与えてくれる快感に酔い痴れて、そして── 「ッ!碧都っ!」 「あっ!あーーーッ!あ、ダメ止まんない…ッ!ああっ…!」  何度も何度も、絶頂した。

ともだちにシェアしよう!