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◇ 「調教……って?」 川崎くんの発した言葉に僕は戸惑った。 意味がわからなさすぎる。日常生活で調教なんて言葉使ったことがない。 普通に尋ねた僕に川崎くんから笑顔はなくなり、代わりに不審そうに眉根が寄った。 あ、こんな顔もするんだ。 「……ハア?ここまでして、わかんねえの?」 「うん」 「綾瀬、俺の“噂”知ってるんでしょ?」 「『7組の川崎。あいつマジのガチホモなんだって。しかも超ヤリチンでおじさん相手にエンコーもしてるらしーよ。だから彼女作んないんだねー。イケメンなのにもったいなーい』っていうあれ?」 「……ふん、よく知ってんじゃん。でも援助交際はしてねえから。信じなくてもいいけど」 「そうなんだ」 「あーもーニブいな。だからあれよ、俺の飼い主になりたいんならきちんとアピって、仕込んでみなよ」 「いや僕は飼い主じゃなくて川崎くんと恋人に」 「細けーな。なんでもいいよ呼び方なんか。とにかく君が俺のことを楽しませてくれる奴ならそれなりに相手してあげるって言ってんの」 川崎くんは、自分のワイシャツに手をかけた。 そのままボタンを三番目まで開き、白い布地の隙間からは鎖骨が浮いた薄い胸が覗く。 豊かな胸も可愛い下着も無い男の胸板がはだけてるだけなのにそれを川崎くんがしてるとどうして妙に色っぽい。 「僕が……、川崎くんを楽しませれば、付き合ってくれる……の?」 「……。かもね」 自信はない。でもやらなくちゃ川崎くんとお近付きにもなれない。 調教なんて言い方はちょっと物騒な気もするけどこの際仕方ない。川崎くんを楽しませて、好きになってもらうためだ。 ……ならばすることは、ひとつだろう。 僕はすぐさま川崎くんのシャツに手を伸ばした。 動揺してるせいで、うまく指が動かない。 「せっかちだね、君は」 「……、だ」 「うん?」 「調教開始だ」 とりあえず先程の彼の言葉を真似てみる。 川崎くんは、何が面白いのかくすくすと笑っていた。

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