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第11話 居場所

××× それから僕は、この部屋で何度目かの朝を迎えた。 勿論、学校には行っていない。 最初のうちは、とんでもない所に来てしまったと思っていたけど。住んでみると、案外居心地が良くて。 誰かが人数分のお弁当を買ってきてくれるし、毎日お風呂にも入れる。 虐げられたり、罵声を浴びる事もない。 例えハイジがここに居なくても、みんな変わらず裏のない笑顔で接してくれる。 こんな事、今まで無かった。 僕をちゃんと見てくれる人なんて、居なかったから。 ここを離れたくない。ここにずっと住みたい。 ここのみんなと、『家族』になりたい── 「姫。プリン買ってきたけど、食う?」 「……ううん」 「何か欲しいもんあったら、遠慮なく言えよな」 「うん……」 コンビニ袋をぶら下げて帰ってきた二人が、部屋の隅で膝を抱えて座っている僕に声を掛けてくれる。 「じゃ、冷蔵庫いれとくから。好きな時に食えよ」 「……ありがとう」 この部屋には似つかわない、少し大きめの冷蔵庫。そのドアを開けて中段にプリンを仕舞ってくれる。 本当にみんな、優しい。 僕の素性をあれこれ聞いてこないし、適度な距離感を保っててくれる。 それがどんなに気が楽で、安心できるか…… 「姫もゲームやる?」 「こっち来て、一緒に遊ぼうぜ」 転がっていた携帯型ゲーム機を掴み上げ、もう一人が気楽に誘ってくれる。 たったそれだけなのに。……嬉しい。 「──って、お前ら! ちったぁ気ぃ遣えや!!」 勢いよく浴室から飛び出したハイジが、寛ぎながらゲームを始める二人に喰って掛かる。 「……あー。さっき俺らを追い出そうとしたのって、そういうコトね」 「つーか。ココ使うの禁止って言ったの、ハイジだろ?」 苛立つハイジをものともせず、冷静に反論する二人。 「はァ?! す、スる訳ねーだろ、……アホ!」 頬を赤く染めながら、子供染みた反撃するハイジ。 だけど腰にタオルを巻いただけの姿では、どんなに吠えても説得力なんてない。 「だったら、ハイジが姫連れてどっか行けばよくね?」 「たまには恋人らしいデートとかしたいよな、姫?」 「……え」 突然振られて、戸惑う。 でも確かに。ハイジと二人で、外に出てみたい。 「うん……」 「──わァったよ!」 肩に掛けていたタオルで髪を拭きながら、ふて腐れ顔のハイジがチラリと僕を見る。 「出掛けるぞ、さくら」

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