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第17話 学校

××× 久しぶりの学校は、相変わらずで。僕なんかが居なくても、何の蟠りもなく回っていた。 そこに安堵も憂いもない。……できる事なら、このまま消え去ってしまいたかったから。 アゲハのお下がりである学生服を身に纏い、学校指定のショルダーバッグを斜め掛けにして教室に入る。 「──あっ! 工藤くん、おはよー!」 「風邪、大丈夫だった?」 「酷かったって聞いてたから……」 「私たち、心配してたんだよぉ!」 僕の姿を見るなり、駆け寄ってくるクラスの女子達。その奥で、冷ややかに敵視を向ける男達。 「……」 心配? そんなもの、した事ない癖に。 人垣を掻き分け自席に付くと、それには動じない女子達がついてくる。……まるで、金魚の糞。 「ところで、王子──アゲハさんの事なんだけど」 「……」 工藤アゲハ── 眉目秀麗。才色兼備。温厚篤実。 この世にある賛美の言葉の数々は、アゲハの為にあるようなものだ。 キラキラと煌めくような笑顔。纏うオーラ。勉強も運動もでき、周囲を気遣う優しさも持ち合わせている。 正に、絵に描いたような王子様。 そのアゲハに少しでも近付こうと、弟の僕を踏み台にしてくる女共。それは何も生徒だけではなくて。アゲハの魅力に取り憑かれた女教師までもが、笑顔の仮面を貼り付け僕に近付いてくる。 時々見え隠れする不浄心に……反吐が出そうだ。 「家を出て、独り暮らししてるって本当なの?」 「……ぇ……」 鞄を机の脇に掛け、椅子を引く手が止まる。 ……アゲハが、家を? 俄に信じられない情報に動揺する脳内。その脳裏を過ったのは……折れ曲がった教科書と、切り刻まれた私服。 ……ああ、だからか。 僕の私物が酷い目に遭ったのは、アゲハが僕と一緒に家を出たと勘違いしたからなんだろう。 「まさか……同棲?」 「付き合ってる彼女(ひと)とか、いないよね?」 「何か、聞いてない?」 少しでも反応を見せてしまったせいか。堰を切ったように、女子達からの質問攻めに遭う。 それを鬱陶しいと感じながらも、思い出さずにはいられなかった。 「……」 山本竜一──僕を強姦した男が、再び訪問してきたあの日の事を。

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